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悼む。

夢の中に一晩中,Kが出てきた。つきあい始めた頃の,ずいぶん若い姿で。そういえば夢に出てくる彼は,いつも若くて,みずみずしく笑っていた。

ぼんやりとした悲しみがつきまとっている。何をする気持ちにもなれなかったが,こんな時こそ身体を動かしたほうが良い,と思って,化粧をちゃんとして,ヨガへ出かける。

あいかわらずハードな動きを黙々としながら,壁の時計を時々見やっては,「告別式が始まった」とか「そろそろ出棺の時間かな」とか,ぼんやりと考えた。出棺の時,霊柩車は別れを告げるようにクラクションを長く長く鳴らす。まるで「永久にサヨウナラ」と言わんばかりに。床に寝転びながらその光景を想像すると,やはり涙が流れた。

今日の午後1時からあった告別式に,ワタシは行かなかった。彼の友人や大学の後輩たち,たくさんの知った顔に会う勇気もなかった。それに,葬儀に出て,遺影や泣いている遺族を眺め,棺に納められた姿を見て,彼の死を確認して何になる?7年前,哀れむような涙ぐんだ表情でワタシをみつめ,黙ってバイクで去って行ったあの日に,ワタシの世界の中で彼は死んだ。同時に,ワタシの一部も,永久に損なわれてしまった。とんでもない喪失感に,ワタシは長く苦しんで,ようやっと忘れたのだ。

彼のブログを,偶然に見つけた時は,複雑な気持ちだったが,読むのを止めることはできなかった。読めば読むほど,複雑な気持ちになった。ワタシがよく知っていた人たちは,みんな彼の周囲から消えていた。そして,もともとひどい睡眠障害だった彼は,神経性の鬱病を発症して,カウンセリングを受け,薬を飲んでいた。それでも,彼いわく『一番悲惨な状況』を,やっと乗りこえ,少しは落ち着いたあとだったらしい。わずかずつでも快方に向かい,必ず病気を克服するのだ,と,体調の良い日は,彼は希望をもってそう記述していた。

Kのほうは,おそらくずいぶん早くに,ワタシのコトを忘れ去ったに違いない。思いを強く残したほうが長く苦しむ。レンアイにおける別れとは,そういうものだ。あんな最低な別れ方をしたワタシたちは,二度と友人になれるわけもなく,ただワタシは,彼のブログにアクセスしながら,彼の生活をこっそり覗き見していた。楽しそうな記述があると嬉しくなったし,鬱がひどくて辛そうだと,気をもんだ。きっと,レンアイ感情ではなくて,姉のような気持ちに近かったのだと思う。4つ下のKは,ワタシの弟と同い年だった。彼とつきあっている時も,彼を心配して,かばう気持ちばかりがワタシにはあった。

「相手が可哀相だと思いながらつきあうなんて,それは愛情とは違うよ」と,友人Mに言われたコトがある。でも,ワタシにとってのKは,いつもどこか可哀相だった。繊細で美しい気持ちのある,優しい人だったのに,人づきあいが下手糞で,肝心のところでハズレくじを引く。自分のコトよりも,彼のコトで,ワタシは悔しい思いをたくさんした。

人は死ぬと,とたんに美しい存在になる。普段は思い出しもしなかった人たちがここぞとばかりに駆けつけ,「とても良い人でした」「どうしてもっと連絡をしなかったのか,後悔しています」「あんなに世話になったのに,心残りです」などといい,涙を流す。死んでからそんな風に持ち上げたって,もう遅い。

だからワタシも,死んだKを美化するのはやめよう。確かに彼には欠点もたくさんあった。それを含めた彼を覚えていよう。忘れよう,と今まで努力してきたけれど,忘れずに,ワタシの知っている彼を記憶にとどめよう。生きていて彼は辛かったのだろうか,それとも,もっと生きたかっただろうか,と考えるのも止そう。Kは,2005年12月8日に,バイクで車に追突し,死んでしまった。この地上から肉体は消え,魂はどこかへ去った。これだけが事実だ。38年間彼が生きてきたコトの意味を考えるのは,よそう。最後の瞬間に,彼がどんな思いを抱いたかを想像するコトも。

ただ,彼の死を悼もう。

何処か,行くべき場所があるのなら,迷わずそこへたどり着けるように。
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by rompop | 2005-12-10 18:27

Kが,死んだ。

Kが死んだ。

日課のようにKのブログをのぞいたら,ためらいがちに彼の友人が訃報の書き込みをしていた。彼が死んだのは昨日。バイクで車に追突したという。

Kのブログは,亡くなった8日の午前の日付で止まっていた。睡眠薬が身体に残っていて,起き上がるコトができない。それでも,今日は診察とカウンセリングに行き,その後,友人が新しく始める医院の開設祝いに駆けつけなければ,と書かれてあった。なんとか,一日を楽しくやりすごさなければ,とも。その祝いのパーティーに向かう途中で,事故にあったのだ。

心臓が2つほどリズムを飛ばして大きく打ち,身体が熱くなった。ウソでしょう?という感情しか起こらなかった。激しく動悸を打つ心臓をおさえながら,通夜と告別式の日時の告知を眺めた。

気持ちの持って行き場がなくて,真夜中だったが,友人Mに携帯メールをした。Kのコトは,彼女もよく知っている。「アンタ,大丈夫か?考えてるとロクなことがないから,今夜はとりあえず寝ろ」と返事が来た。返信せずに,そのまま布団に入って眠った。
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by rompop | 2005-12-09 23:25

2005・9・19 飛騨高山へ②

モゾモゾと起き出し,時間があるので,部屋を出た。昨日は入るコトができなかった,宿の外にあるという「かわらの湯」。ここは,渓流のすぐ近くに作られた,半露天風呂で,せせらぎが間近に聞こえるらしい。


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宿の玄関でサンダルを借り,それを履いて,長いエントランスを抜けて外へ出る。道路を渡って,垣根沿いにしばらく歩くと,小さな暖簾(のれん)のかかった,小屋が見えてきた。

脱衣場で作務衣を脱ぐ。中には人がいるようで,くぐもった声が聞こえる。



そう大きくない,木でできた浴槽。これもだろうか?目の前は渓流だ。朝日がたっぷり入り,開放感のあるステキな露天風呂だ。湯の質が宿のモノとは違うらしく,少しぬるぬるする。「浴槽の床が滑りやすいので注意」と貼り紙がしてある。

ゆったりと身体を湯に沈める。この湯も,いくらかぬるめで,気持ちがイイ。長く浸かっていても,湯あたりしないに違いない。

先客は,地元の人らしい年輩のご婦人と,子供連れの若奥さん風。ご婦人は,ワタシをチラと見ると,「宿の湯とまた違うからねぇ」と話しかけてくる。「あ,やっぱりそうなんですか?少しヌルっとしてますねぇ」「そうそう。こっちの方が美人の湯だで。どうしようかねぇ,これ以上,美人になったら」そういって,若奥さん風の女性と顔を見合わせて,ワッハッハと楽しそうに笑った。温泉に入ると,見知らぬ同士でも,なんだか親しみが湧くから不思議だ。

「このお湯,飲めるよ」と教えて貰ったので,備え付けの竹をくりぬいたコップで,湧き出る源泉をすくって飲んでみた。味は・・・うむ。

ここは,洗い場には石鹸もシャンプーもない。どうやら,身体を洗うのは御法度らしいので,しばらく湯につかって,空の色や渓流の水しぶきを眺めてあがり,宿へ戻った。野趣あふれる露天で,とても気持ちがヨカッタ。


朝食は,8時。昨夜と同じ部屋で,これも囲炉裏を囲んでの朝食。


焼き鮭,温泉卵,味噌汁などに,やはり,朴葉焼き。今度は,味噌が主体で,ネギと生卵を混ぜて焼き,火が通ったあたりで,ご飯に乗せて食べる。香ばしくて,美味しかった。旅に出ると,不思議に朝,お腹が空く。ご飯はお代わりをして,軽く2膳

囲炉裏端のあるロビーで,出発前のコーヒー。


車3台に分乗して,上高地へ。到着したのは,11時半ごろ。まずは,「上高地帝国ホテル」のレストランでランチをするらしい。このレストランは有名で,昨日は2時間待ちだったそうだが,30分で中へ入れた。

メニューを見て,その値段にたまげる。小心者のワタシは,一番安い,ビーフカレーを所望。それでも,2500円ぐらい。ビーフは飛騨牛らしく,ものすごく美味しかった。同じテーブルでは,ハッシュドビーフのかかったオムライスを食べている。これも美味しそう。



d0062023_14101688.jpg食後,トレッキングを2つのコースに分けた。1つは,河童橋まで行き景色を見たあと,そのままUターンして,大正池まで戻る,「ゆったりコース」。もう1つは,河童橋を通過して,そのずっと先の明神池まで行き,Uターンして戻る「健脚コース」。



ゆっくりと河童橋を目指して歩いた。川の水も,空気も,とても綺麗だ。心配した気温も,そう低くはなく,半袖と長袖のTシャツの重ね着で,ちょうど良い。



d0062023_14104452.jpg河童橋のふもとで,写真を1枚だけ撮り,30分の自由行動。土産物屋をのぞき,河童橋から下の河原へ降りて,たくさんの観光客に混じって,川を泳いでいるカモの群れを眺めた。水が冷たそうで,ものすごく美しい。同じ鳥でも,こんな綺麗な場所に暮らせるのは,シアワセだな,と思う。うちの近所のドブ川に,たまに浮いているカモを思い出した。



土産物屋で,「高原ソフトクリーム」を10個買い,食べながらまた歩き出す。しかし,時間配分を間違えて,ゆっくりし過ぎたらしく,合流時刻がどんどん迫ってきた。前半は優雅なトレッキングだったが,後半は,時計を見ながら,早足でひたすら歩く,という,強烈なトレッキングに。


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2時30分,大正池のふもとにあるホテルが合流地点。予約したタクシーが3台,待ち構えていた。


そこから駐車場まで戻り,レンタカーに乗り換えて,高山駅まで。途中で土産物屋に寄り,ギリギリセーフで高山駅から4時半ごろの電車に乗る。新幹線の中で弁当を食べ,少し眠って,8時過ぎ,京都駅で途中下車して,みんなと別れる。



帰宅は,9時過ぎ。とっても疲れた。
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by rompop | 2005-09-19 14:03

2005・9・18 飛騨高山へ①

飛騨高山へ,1泊の旅。新大阪から新幹線で名古屋まで行き,高山線に乗り換えて,高山駅まで。


1時過ぎに高山へ着く。レンタカーを借りて,市内観光コースと,白川郷コースの2手に分かれる。いきなり民家の中に合掌造りの屋根が見えた瞬間に,車酔いも吹き飛んだ。

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世界遺産に登録された,という,白川郷の集落。のどかな自然の風景の中に,点々と,大きな茅葺(かやぶ)き屋根の合掌造りの木造家が点在している。金色の稲穂,ススキ,紅色や淡いピンクのコスモス,黄色い小菊や野の花。それらが咲き乱れ,集落の中を走る水路には,底まで透明な水が満々と流れている。水を覗きこむと,大きなコイや,川魚がゆらゆらと泳いでいる。

濃い灰色の大きな魚が,何匹もゆうゆうと泳いでいた。覗き込んだワタシたちは,「わぁ,大きい。フナかな?」「鯉ですか?」「なまず??」と騒いでいると,隣で一眼レフのシャッターを切っていた中年男性が「マスです。」と,ひと言。そういえば,魚の背には綺麗なオレンジ色の細かい点々が。ニジマスだろうか。

どの池や水路を見ても,魚たちが見える。きっと,とても綺麗な水なのだろう。


d0062023_015945.jpg集落の入り口にある,ひときわ大きな家。『和田家』と看板がある。ここは家の中を一般公開しているらしい。入場料は300円。靴を脱いで中へ入り,家中を見学。黒く光った古い床,はしご段を上り,屋根裏部屋のような天井が低くて広い部屋には,昔使われていた農耕道具などが並べてある。この家には,公開している部分をのぞいて,今も,普通に人が住んでいるようだ。


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あぜ道を歩きながら,集落をそぞろ歩く。雪の降りつもった真っ白の集落も,さぞ風情があるだろう。でも,穏やかな初秋の,こんな風景も,いかにも「日本の秋」というカンジがする。道路に面した土産物屋や,茶店も,ほとんどが藁葺き屋根の合掌造りだ。店先にさまざまな民芸品がぶらさがった風景も,とても可愛らしい。








車に乗り,『城山跡』という展望台へ登る。眼下に集落が一望のもとに見渡せる,絶好のビューポイントミニチュアのような合掌造りの家々。これを見ると,やっぱり永久に保存して欲しいなぁ,と思う。夢中でシャッターを押したが,この景観は,とても写し取るコトはできないだろう。

「雪の頃には,すごく綺麗やろうなぁ」じっとその風景を見下ろす。

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少し時間があったので,もう一度集落に戻って,風情のある店でお茶を飲んで休憩するコトに。しかし,目星をつけて入った店は,ただの写真展示などをやっているだけで,喫茶はやっていないようだ。「お茶はやってないんですか?」と尋ねるワタシに,店主は「ええ,喫茶は今,考え中なんです」と,のんびり答える。ガッカリしたが,微笑ましかった。

あきらめて,別の店で,抹茶ソフトクリームを買ってもらい,庭に置かれたベンチに並んで座って食べる。センセイたちは,かき氷と,エスプレッソ。

本当は,もっとゆっくり,集落の一番端まで,ぶらぶらと歩いてみたかった。資料館なども,全部入ってみたかったが,夕食までに宿に戻らねば,ほかの人に迷惑がかかってしまう。少しだけココロを残しながら,車へ。

もし,またの機会があったら,できれば今度は雪のシーズンに,この集落の中の民宿にでも泊まり,温泉に入って,のんびりと1日,この空気を味わいたい。



宿は,奥飛騨温泉郷にある,『湯元長座(ちょうざ)』。「日本秘湯を守る会」に所属している宿だ。石段でできた,長いエントランスを登りつめると,堂々たる風情の,古めかしい宿の玄関。そのエントランスの最後には,湧き水が出る水飲み場があり,ひしゃくが2本,置いてある。傍らには,座って休めるように囲炉裏のある休憩場。いっきに,タイムスリップしたよう。

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宿の主人のこだわりで,あえて古い木材を使い,昔ながらの宿を再現しているのだそう。天井の高いロビーには,ソファやテーブルがあり,その隣には,畳に囲炉裏の部屋。熊の頭付きの毛皮が敷きつめてある。囲炉裏には,もちろん本物の火が。外国人の観光客が,とりわけ喜びそうな風情だ。



客室はいくつあるのだろう。とても広々としている。床や天井,壁などに使われている黒光りしている木材が,どっしりと重厚で,しかも落ち着ける雰囲気だ。気に入った。

ワタシたちの部屋は,離れに用意されていた。離れへ行くまで,またもや,長い長い渡り廊下を歩いてゆく。両隣はガラスで,外界の自然がたっぷりと目に入る。青々とした緑の中庭,水しぶきをあげて回る,小さな風車。夜になると,外は真っ暗になり,渡り廊下には,点々と置かれたランプが小さな灯をともす。怖いような,美しいような,幻想的な雰囲気。「幽玄」ってこういう風情を言うのだろうか。

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7時前にワタシたちが到着すると,ほかの人たちは,みな,温泉に出かけたあとだった。誰かが戻ってくるまで,部屋で待つ。

広すぎる部屋。中央の広い畳敷きの部屋の両隣には,6畳ぐらいの小部屋が2つあり,その1つには,本物の囲炉裏がある。洗面台もトイレも広く,黒い木をたっぷりと使ってあり,とてもイイ感じ。母たちを連れてきてやりたいような,宿だ。





7時半から,夕食。これは,2階にある大部屋で。

大きな囲炉裏が用意され,それを囲むようにして,座る。そう大きな火ではないが,顔がほてるように熱い。これは真冬ならとても温かいが,夏は逆に辛いだろうな。9月中旬とはいえ,まだ半袖のワタシたち。少し暑い。

食事が始まる頃,宿の主人が挨拶に来られた。人の良さそうな初老のオジさんだ。宿のなりたちについて紹介されたあと,温泉の紹介などがあり,「食べながら聞いてください」と言われたが,箸を止めて,かしこまって聞く。

さて。夕食は,山菜がたっぷりの,土瓶蒸しや佃煮,天ぷらなど。メインは,朴葉(ほおば)という大きな葉っぱの上で肉や野菜を焼き,味噌をまぶして食べる,朴葉味噌焼き。肉は飛騨牛でとても柔らかく脂があって,美味しい。

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d0062023_2353853.jpgそして,火の周りの灰には,串を通した,岩魚(いわな)の塩焼き,五平餅(ごへいもち),じゃがいもの味噌焼きなど。調理場で焼いたばかりなので,熱々ですぐに食べられるようになっている。


9時過ぎにお開き。お腹いっぱいになった。なかなか美味しかったと思う。なにより,囲炉裏で食事をする,という非日常感覚がたっぷり味わえた。


食事のあと,1人で風呂へ。貸し切りの家族風呂が3つあるというので,まずそこへ。「1人では入らないでください」と注意書きがあるが,鍵が開いたので,こっそり入ってみた。

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鍵つきのガラスの扉の向こうには,これまた,延々と細長い石畳の道がつらなる。庭に仕切りをして屋根をつけただけの渡り廊下。歩いていくうちに,期待感が高まる。たどりついた個室は3つ。2つが空いていたので,さっと入って鍵を閉める。





小さな浴室の外には,これまた小さな貸し切りの露天風呂。しかし,外は真っ暗で,湯の音だけがしていて,なんだか怖い。隣の風呂には客がいるはずだが,何の音もしない。気味が悪くなり,すぐに出てしまった。まぁ,いちおう入った,というコトで。

また,長い渡り廊下を戻って,今度は大浴場へ。そう大きな浴場ではないが,総檜(ひのき)造りらしいので,木のいい香りがする。白っぽい木肌。パンフレットで見たよりも,ずいぶん年季が入って古びてはいるが,やっぱり落ち着く。灯りも,蛍光灯ではなく,ぼんやりとしたオレンジがかった懐かしい感じの灯りだ。

d0062023_23584332.jpgこの温泉は,たっぷりとした「かけ流し」の湯だと,宿の主人は少し得意そうだった。温度はそう高くもなく,ずっと入っていられそうな,ワタシ好みの水温だ。

外には,露天風呂がある。木でできた引き戸をあけた時,何かが跳ねたので,「あ」と思って足元を見ると,赤茶色の小さなカエル。ワタシと一緒に,戸の外へ出たようだ。ううむ。風情だなぁ。

外は真っ暗で,ほとんど灯りもないので,景色はよく見えない。ただ,大きな木が周りに生い茂っているのだけが見える。大きな岩でできたスロープをゆっくりと歩いて,湯に入る。深さはない。これも,ほどよく温(ぬる)めの湯だ。ワタシは熱い湯が嫌いなので,満足のため息をついて,首までたっぷりとつかって,キョロキョロとあたりを眺める。

だんだんと目が闇に慣れてきた。浅くて広い露天だ。それでも,向こう側はなおも暗闇で,ただ,湯がほとばしり出る音だけが響いている。少し,怖いな。中の浴場には人がいるが,外にはワタシ1人。の静けさと黒さが,すっぽりとワタシを包んでいる。

浴室の窓から誰かが頭を出し,「わぁ,露天風呂がある」と嬉しそうに言い,やがて,頭にタオルを巻いた年輩のご婦人が1人,戸をあけて外へ出てきた。そして,あっという間にザブンと湯につかり,「あらぁ,気持ちいいねぇ」と,方言なまりで大きなひとり言。怖かった暗闇が,急に怖くなくなった。ワタシは心底ホッとして,「あぁ,ヨカッタ。1人で怖かったんですよ」と話しかけた。そして,暗くて顔はよく見えないが,顔を見合わせて,2人で笑い合った。

風呂の中央には,白っぽくて大きな平らな岩が1つ。ワタシはまるでカエルのように,その岩に座って,少し風を浴びた。そのご婦人は,「フウ」と満足のため息をついて,仰向けになり,湯にプカンとしばらく浮いていた。

しばらくして,小さな子供を連れた若い女性と,そのお姑さんらしき年輩のご婦人が入ってきた。子供は暗闇を見て「怖い怖い」と泣いていたが,2人に手をつながれたまま,恐る恐る湯に入った。

いつまでも入っていられそうだったが,上がるコトにした。大浴場へ戻り,髪を洗う。こんな大きな檜のお風呂が家にあったら,イイだろうなぁ。

部屋には,浴衣と,作務衣(さむえ)の2種類が用意されていた。楽そうだったので,作務衣を着た。裾がはだけないので,こっちのほうが,いいな。

館内をウロウロして,写真を撮りながら,部屋へ戻る。11時過ぎ,就寝。
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by rompop | 2005-09-18 23:18

またもや,京都。

盆休み最後の日。目覚まし時計を何度も止めながら,10時まで寝続けた。

両親と一緒に,京都へ買い物。河原町にある高島屋で,母の部屋着,父のポロシャツ,などを買い,食堂街で,寿司の盛りあわせを食べる。

本当は,母は玄関マットを買いに来たのだが,手ごろな値段で良いのは無かった。とても気に入ったダークな色合いのペルシャ絨毯は,とても素敵だったが,赤札で40万円近かった。買える値段ではないのに,ずいぶん,熱心に店員の話を聞いているな,と思っていたら,あとから母,「ものすごい男前の店員さんやったなぁ,背も高いし」。

何度も振り返って見たが,普通レベルだった。確かに背は高く,やや長髪気味の髪がオシャレなカンジではあったが。「それで,買いそうなそぶりやったんか」と,呆れる。あれが母にとっては,「ものすごい男前」なんだ。

さて。

気温の高い四条通りを歩き,烏丸にある大丸百貨店へ。今日は「五山の送り火」(大文字焼き)の最終日なので,夕方から浴衣を着た人たちが増えてきた。結構な人ごみ。

錦市場の通りを抜けて,適当に食料を買いながら,大丸へ。お目当ては,地下1階。ある店でいつも午後4時から販売している,ステーキセット(500円)だ。1人分ずつ,ステーキと,ポテトとサラダがついていて,なかなかの味。弟は,ステーキでなく,デミグラスソースのハンバーグセットを所望。すぐに売り切れてしまうのだが,無事,ゲットできた。今夜の夕食は,これ。

午後,5時過ぎ,帰宅。

疲れた。父と母と一緒に街へ出ると,すべてのペースがゆっくりになり,時間もかかる。もちろん,歩調もだ。普段,人にあわせるコトに慣れていないワタシは,自分のペースが乱れて,とてもとても疲れる。それに,なんといっても,今日は結構歩いたはず。

コーラを飲みながら,部屋でゴロゴロして,DVDの続きを見る。自分の部屋に1人でいる時間が,天国だ。


あひるご飯 納豆ご飯。
昼食 寿司盛り合わせ。
夕食 ステーキ,ポテト,マカロニサラダ,大根とミョウガの味噌汁。
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by rompop | 2005-08-16 11:52

京都を,満喫。

昼食は,三条にあるの『カフェ・アンダパンダン』。ペインティングされ,自主上映の映画やライブハウスのチラシが,一面に貼られた狭いコンクリートの階段を下りて辿り付いたのは,穴ぐらのような,塹壕のような,キッチュな地下食堂のような,不思議なカフェだった。

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思いのほか,広々とした店内には,ぬくもりのある木の椅子やテーブルが並べられ,片隅にはアップライトピアノ。壁はやはり崩れかけ,廃墟のようにも見えるが,殺伐としたカンジはなく,妙に落ち着く。とても気に入った。


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このビルは,もとは新聞社だったという古い古いビル。ランチがいくつかあったので,プレートランチを。セルフサービスで,まるで学食のように,オレンジ色のプラスチックのトレイに,ナイフやフォークを並べて席へと自分で運ぶ。プレートランチは500円ちょっとで,安かった。こじんまりとした量だが,美味しいシチュー,ひよこ豆のサラダ,ガーリックマカロニパスタ,フランスパン。少し小腹が空いた時には,ちょうどよいカンジ。他の料理も美味しそうだった。

ブラブラと三条通りを歩いて,本日のメインイベント,錦小路通りにある,『夢の癒し』へ。結構な人気で,やっと2時半に予約が入った。初体験の「岩盤浴」。ロッカールームで下着を全部取り,作務衣に着替えて,室温約40℃の室内で,熱い岩の板の上に,バスタオルを敷いて寝転ぶ。うつ伏せに5分,仰向けに10分。そして,外へ出て涼しい部屋で,ぬるめの水で水分補給しながら,休憩5分。これを3回繰り返す。

浴室は洞窟のように薄暗く,静かに環境音楽が流れている。頭の横には砂時計がセットされていて,これをひっくり返して,寝転ぶ。半身浴をした時のように,大量の汗が全身から出る。これは,絶対,身体に良さそうだ。今流行りの『解毒』というやつ。汗に混じって,体内の老廃物がどんどん出てゆく気がする。ただし,サウナが苦手なワタシは,高温の室内にいるだけで,かなり辛かった。年輩の人や,心臓が弱い人には,不向きかも。

4時過ぎに終了し,心地よい疲労感につつまれて,店の外へ出る。シャワー室もあるが,これで出る汗は,サラサラとした汗らしく,タオルで拭ったままで帰るほうがイイらしい。そのとおりにした。本当に,全然べたつかず,肌はサラッとしていた。

時間があったので,Yちゃんお勧めのカフェへ。いわゆる「町屋カフェ」。ホンモノの古い古い民家へ入っていく。カウンターもあるが,店の半分は,畳敷きの和室に,丸いちゃぶ台がいくつか。まるで,田舎のおばあちゃんの家に遊びに来たようなカンジ。床の間には,古い雑誌やカセットデッキ。加山雄三のLPレコードが飾られていた。

アイス・カフェモカをオーダーした。分厚い陶器のこっくりしたマグカップに,たっぷりと入っていた。とても美味しかった。すごく面白い店だなぁ。店の名前は,『サボンカフェ』。Yちゃんは,お隣の美容室に通っているそう。

夕食は,河原町のあじびる2階『花かれん』

ワタシのお勧めは,3150円の「花かれんコース」。可愛い創作寿司や,温かい茶碗蒸し,天むすなどが次々と出され,まさに,女子が喜びそうな目にも美味しいコースなのだ。そして,最後には「おまかせ寿司」。好きなだけにぎり寿司を食べられる。ごく小さいにぎり寿司なのだが,ワタシは食い意地を張って,なんと13個。も食べてしまった。大満足。毎月テーマは変わるが,8月は「北海道」がテーマらしく,北海道にちなんだ海鮮がたくさん使われていた。

河原町通りをブラブラ歩き,ラストは,木屋町にあるカフェ『ソワレ』。 結構有名なカフェなのだが,ワタシは初めて。店内は,“夜のとばり”。のような淡い青の照明がぼんやりと灯っている。とても古い店のようで,メニュウも摩訶不思議な香り。名物らしき「ゼリーポンチ」。を注文。すごく綺麗な飲み物だった。

d0062023_1526459.jpg甘そうに見えるが,甘みのないサイダーに,赤や黄色,青,紫など原色のゼリー。がたくさん入っている。ゼリーというよりも,少し堅い,寒天のようなカンジのゼリーは,なかなか美味しい。ちょっと感動しながら,2人で食べる。また,来ようかな。青くて静かで,ウエイトレスも少し不思議なカンジの大人しい女のコで,妙に落ち着く。2階の窓辺に座れば,すぐそこに高瀬川が見えるだろう。


9時過ぎ。名残惜しいが,Yちゃんは明日から仕事。たっぷり遊び,いろいろ喋って楽しかった。河原町駅へ通じる階段の前で,「じゃあね」と手を振って別れる。



朝食 ドンクのチーズパン,ミルク。
昼食 カフェのプレートランチ。
夕食 『花かれん』のお寿司。
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by rompop | 2005-08-14 15:23

更新。

久しぶりに30分早起きをして,お弁当を作ってみた。といっても,ほとんど冷凍食品だが。ゴーヤと卵を炒めてみた。アレ?「ゴーヤ・チャンプル」って,豆腐を入れるのだったっけ?

ゴーヤは好きだが,あまりに苦いのは辛いので,いつもさっと湯がいて,氷水にさらす。そうすると,程よい苦味だけが残る。いつか,沖縄料理の専門店で,本場の「ゴーヤ・チャンプル」を食べたら,とても苦くてギブアップしてしまった。

d0062023_10253817.jpgAmazonに注文していたCDが,アメリカから届いた。Bryarsの,『Jesus' Blood Never Failed Me Yet』。『ヘドウィグ』の舞台で,客入れの間,ずっと劇場に流れていた音楽。同じ曲だが,アレンジの違うものが6種類入っていて,劇場で使われていたのは,多分,5曲目。。トム・ウェイツの歌声がかぶさっている。トム・ウェイツを聴くと,ある女性のコトを思い出す。髪が長くて,暗い店のカウンターの向こうで,いつもタバコを燻らせていた,猫の大好きな,ある女優のコト。

帰り道,宝くじを買う。駅に向かう道路沿いにある,とても小さな宝くじ売り場。数年前に,この売り場から3億円が出たと,貼り紙。「ホントにこの売り場から出たんですか?」「ええ,ホントですよ。1等,前後賞あわせて3億円。」にっこり笑った売り場のオバさんの。笑顔がとてもヨカッタので,20枚,バラで買った。なんとなく,「縁起が良い」カンジが漂っていたので。

誠サマの『旅日記』が,やっと更新。3月からずっと音沙汰がなかったので,すっかりテンションが下がっていたが,更新してくれると,やはり嬉しい。お母さんが亡くなってから,もう3年も経つのだ。あの時は,まるで。自分のコトのように,気持ちを推し量っては,泣いたっけ。

本日発売の『サンデー毎日』を書店で立ち読み。誠サマの記事がカラーで見開き2ページ。ごく最初のほうに載っていた。以前のワタシなら,本をひっつかんでレジに向かっただろうが,立ち読みで済ます。写真は,なかなか綺麗だった。



朝食 コーヒー牛乳,トースト。
昼食 弁当(ゴーヤの卵とじ,ハンバーグ,春巻き,シュウマイ),味噌汁(レトルト)。
夕食 ナスと牛肉とピーマンの味噌炒め,カニとキュウリの酢の物,冷やっこ。
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by rompop | 2005-08-02 10:24

オメデトウゴザイマス。

新しい年の新しい朝。眠いが,9時に起きる。ぼうっとして階下へ降りると,母はもう,新しい割烹着エプロンをして,お雑煮を作っていた。いつも雑然としている居間のコタツの上も片付けられ,重箱が鎮座している。

10時前。本当に年に1度,家族4人が同じ食卓を囲む。熱燗にした日本酒を,おちょこに1杯ずつ,父が「あけましておめでとうございます。今年も健康で・・・」とかなんとか言ったあと,「おめでとうございます」と乾杯。こういうのがワタシは,とても照れ臭い。

初めて買ってみた,出来合いのおせち料理。食いしん坊の弟は,「これは何だ」と言いながら,とりあえず全種類を網羅している。家では絶対に作らないような珍しいものがたくさんあるので,気に入ったようだ。うちのお雑煮は京都風に,大きな「かしら芋」が入っている。そこに餅を入れ,かつお節をパラパラとまぶす。味噌は本格的な白味噌ではなく,赤と白のブレンドだが。

父は餅を3つも食べたが,ワタシは食欲がなく,1個でギブアップ。のどかで平和な新年の朝である。

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d0062023_21324977.jpg 温泉のコトが頭から離れず,最終的に2つにしぼった宿に,それぞれ電話をしてみる。電話の応対を参考にしようと思ったのだが,余計に混乱した。結局,料理について,中年男性が結構親切に応対してくれた,山中温泉の「花つばき」に決定。もう,面倒になってその場で申し込んだ。会席料理にカニ料理を6品ほど入れてくれる,というコトで,23,500円でお願いする。この値段なら,もちろん冷凍だが,いたしかたなし。あぁ,やっと決まった。

それにしても,年末からずっと温泉宿のネット検索をしていたおかげで,北陸方面の温泉にちょっと詳しくなった。いつか行ってみたい素敵な宿も,3軒ほど見つけた。これから,年に1度くらい,みんなで温泉に行くというのも,なかなか良いかもしれないな。

3時過ぎ,母と台所のテーブルで向かい合って,お茶漬け。美味しい「すぐき」でサラサラと。

明後日は,名古屋だ。何も準備をしていなかった。何を着てゆこう。そして,何を食べよう。少しだけネットで調べてみる。少し早めに着いて,「虎屋」のういろうを買おうかな。JR名古屋の高島屋の地下1階で売っているのだ。タイムスケジュールを頭の中で描いて楽しむ。帰りには名古屋駅で,味噌煮込みか,味噌カツを食べよう。決定。

夕食は,おせち料理とご飯。豆腐とネギの味噌汁。ブリ大根。
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by rompop | 2005-01-01 21:30

嫌な夢で,覚醒する。

昨夜はなんだか嫌な夢をたくさん見た。呆けてしまった父が,大声でどなりながら,暴れている夢。母とワタシが必死で父を押さえつけている。隣人が飼っている獰猛そうな2匹の犬が,家に入り込んできて,今にも母に噛みつきそうになっている夢。追い払おうとしても,ワタシも恐ろしくて,どうしていいかわからない。一触即発で犬は今にも母に噛みつきそうだ。優しいはずの隣人も,夢の中では冷たい顔をして知らぬふりをしている。

下腹が鈍く痛み,目が覚めた。3時過ぎ。真夜中だ。嫌な夢だったなぁ,としばらく眠れず,起きあがってパソコンの電源を入れた。宵っぱりのKさんから,メールの返事がきていた。こんなコトをしたら,ますます神経が逆立つなぁ,と思いながら,人恋しくて,「やな夢を見て,覚醒してしまいました」と,メールの返事を書く。3時半頃,また布団に入る。すっかり身体が冷えてしまった。外では,新聞だか牛乳だかをくばる,スクーターのエンジン音。

冷え込んだ朝。朝食は,ホットミルクと,父のバナナを1本食べた。胸がむかついている。何故こんなに体調が良くないのか。更年期障害にはまだ早い。爽やかな朝なんて,もうワタシには訪れないのかな。


昼休み,ボスが部屋に1人でいたので,良い機会だと思って部屋に入り,父の放射線治療がとても効いて,PSA値が飛躍的に下がったコトを報告した。この値は,前立腺疾患における腫瘍マーカーのようなものだが,だいたい「4」が基準値とされている。健常者はだいたい4以下。4~10がグレーゾーンで癌の可能性が30%ほどだという。10以上は,癌の疑いが濃厚だ。父は治療に入るまえ,いっきに16に上昇してしまったのだ。

治療後,数ヶ月たって,初めて検査をしたら,その数値が「1,7」に下がっていた。もちろん,全摘出したわけではないので,癌細胞はいぜん,あるのだろうが,それでも,とりあえずは安心。医者も「効果は上々ですよ,もう,何を食べても何をしても,大丈夫。普通に好きなコトをして生活してください」と太鼓判を押してくれた。「そうか,それはヨカッタですねぇ」と,ボスは満面の笑顔で喜んでくれた。


6時半過ぎ,ひたすらまっすぐ帰宅。

夕食は,麻婆豆腐,かす汁。寒くなってきたので,かす汁が美味しい。

なんだか疲れがとれないので,うんと早寝。11時には布団に入り,単行本を読みながら,眠気が襲ってきたところで,ぱたんと眠る。
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by rompop | 2004-11-17 20:53

負けず嫌い。

9時過ぎに目覚ましが鳴る。ああ,昨日は身体が疲れていたらしく,久しぶりに,熟睡できた。人間の身体って,とてもわかりやすい。

スーパーのチラシを広げ,何を買ってくるか,母に相談。10時半頃,出かける。特価の,「ナス4本入り」は,影も形もなかった。「もう無くなっちゃったんですか?」と,店員に尋ねる。売り切れるのが早過ぎる。負けず嫌いのワタシは,こんな風に出遅れるのが,大嫌い。がっくりして,カートを押して店内を回っていると,さきほどの店員が,「お客さん!」と走ってくる。手にはナスの袋。「お客さんでしたよね,ナス。裏に一袋だけ,残っていましたから」と,手渡してくれた。「わぁ,アリガトウ」と,とたんにハッピーになる。

今日はアイスクリームが安い。カップのアイスを5個,カゴに入れる。母に頼まれた「ホウ酸団子」も,最後の一袋をゲットした。なかなか,いい感じだ。

トイレットペーパーも安かった。一袋買って,自転車の後ろの荷台に,紐でしっかり固定して,グラグラとしながら,自転車をこいで帰る。つぶしてはいけない,イカの天ぷら,卵のパック,おぼろ豆腐。道端の穴ぼこや,小石に気をつけて。

あひるご飯は,トーストに,賞味期限の怪しいベーコンとレタスを挟んで。マヨネーズをたっぷり。コーヒー牛乳。イカの天ぷら。

撮りためたビデオを,ごろごろしながら,眺める。久しぶりにのんびりした気分。

4時,米をとぎ,夕食の支度をする。母も,だいぶ元気になり,2人で台所に立てるようになった。

夕飯を食べようと階下へ降りると,母がまた,「少し具合が悪い」と布団に寝ている。いっきに暗くなる。しかし,話をよく聞いていると,朝から父が,ゴミ捨ての曜日を何度も何度も母に尋ねたり,先ほどは,「第1月曜日」が何日か,というコトで,散々もめたらしい。6月の7日は,第1月曜日なのだが,父の理屈では,カレンダーを見ると,7日の週は第2週になっている。だから,7日は「第2月曜日」だと言うのだ。

カレンダーを指差しながら,「確かにカレンダーを見ると,7日は第2週にあるけど,6月に何回月曜日があって,その何番目の月曜日か,ということなんやから,7日は,6月に入って第1回目の月曜日。だから,第1月曜日なんや」と,説明する。「わかったか?」と聞くと,「わかった」と言うが,本当に納得したかどうかは,怪しい。先ほどは,同じ説明をした母に,「納得できない。ママはおかしいんじゃないか」と,散々,言ったらしい。

燃えるゴミ,リサイクルごみ,大型ごみなど,それぞれに出す曜日が違う。父は,母の代わりにゴミをきちんと出そうと,その曜日のコトだけで,頭がいっぱいなのだ。それで何度も何度も,「夜のうちに出してはいけないのか」などと,同じコトを繰り返し,母に尋ねる。

「ゴミのコトは,ワタシがやるから。パパは,一切,ゴミのことは気にしなくていいから」と,強い口調で言ってしまった。父は「はい」と,うなだれた。

父はおかしい。以前から物忘れや,言動に怪しいところがあったが,このところ,ますますおかしい。どうすればイイのだろうか。軽い脳梗塞があるので,病院の脳神経外科には,以前から通っている。しかし,アルツハイマーなどの外来は,また別なのではないだろうか。別の病院へ連れていったほうが,良いのだろうか。しかし,そういう所へ連れて行くコト自体,父にショックを与え,症状を悪化させるコトはないのだろうか。

母は,父がこのまま,おかしくなってしまうのでは,と不安で,そのコトを考えると,頭がぼうっとして,気分が悪くなったらしい。どうすれば良いのか,ワタシにもよくわからない。ワタシの脳の血管もおかしくなりそうだ。

「救心」を飲んで横になっている母を見ながら,砂を噛むような思いで,夕食を食べる。ニラと豚肉の醤油炒め,ゴーヤとツナのマヨネーズ和え。

父は,機嫌を損ねたのか,布団に入って,ぷいと向こうを向き,文庫本を一心に読んでいる。「おやすみ」と言ったとき,返事をしなかった。
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by rompop | 2004-06-06 13:10