2007・9・6 ① 療養型病床。

残っていた夏休みを,午後から半休とった。ゆったりウィンドウショッピングでもしたいところだが,懸念事項を片づけなければ。

JRは,事故のため,運行を休止していた。しかたなく,阪急に乗り,地元の駅でおりてバスに乗る。


市内にただ1つだけある,介護療養型の病院。5月には,隣接する老健の見学にきたコトがある。見学の感触は悪くなかったのだが,父に「経過観察中の大人しい前立腺癌」があるコトが知れると,ここの老健からは,あっという間に断られてしまったのだ。

隣にあった病院は見学していなかった。まだ父には必要ないと,その時は思っていたから。老健の担当員の話では,「要介護度4以上」の人がほとんどで,「天寿を全うされるまでおられる方が多い」とのコト。

胃ろうになった時点で,市内での老健利用は,難しくなってしまった。入れるところがあるとしても,待機期間が間違いなく長い。そして,3ヶ月か半年サイクルで,次の受け入れ先を探してウロウロするコトになる。

療養型の病院なんて・・・イヤだな,と思う気持ちも正直ある。間違いなく,父は寝たきりになってしまうだろう。リハビリが辛い父にとっては,楽になれるのだろうが。。。けど,今の父にフィットする場所が,どうしても見つけられない。病院以外の施設では「進行がきわめて遅い」といくら説明しても,前立腺の癌が,ネックになってしまう。


次にうつる病院の目星はつけてある。以前,こっそり見学に行き,「ここならイイ」と思った,隣町の病院だ。もう1つのところは,「死んでもこんな所には入れたくない」と思った。ただし,ここも基本は3ヶ月か半年だという。病院を転々とさせるのでは,老健をたらい回しにするのと,ちっとも変わらない。だから,落ち着けるところを,見つけなければならないのだ。


阪急の駅から8分ほどバスに揺られて,着いた。駅前からちょっと離れただけなのに,いきなり「田舎」な風情が漂う。緑色の田んぼが一面に広がり,農家が転々としている。スズメがたくさん飛んでいる。切り立った山のふもとに,どーんと,そのR病院は建っている。ぽつんとあるバス停でバスを降り,田んぼの際の道を通って,病院へ向かって歩く。

平日の昼間だというのに,都心部の病院とは違って,人の出入りがほとんど無い。これはつまり,療養型の病院の特徴なのかな。この病院は,一般病棟はなく,病院全部が,長期療養型の病床なのだ。外来もやってはいるが,内科とリハビリテーション科のみ。地元にずっと昔からある老人病院なのだろう。


ガードのきびしい病院だったら,看護師詰め所でチェックされるかもしれない。ドキドキしながら,同じバスから降りた初老のご婦人(どうやらオムツを下げて面会に行くらしい)のあとをついて,紛れるようにして,エレベーターに乗りこんだ。


ご婦人は,ゆっくりと後ろをついてきて,一緒にエレベーターに乗りこんだワタシに気づいて,ちょっと警戒しているようだった。エレベーターのボタンを押さずに,「どうぞ」とワタシに先を譲った。しかたなく,最上階の4階のボタンを押す。


エレベーターの扉が開いた正面に,看護師詰め所。受付に氏名を記帳するためのノートが広げてある。書かなきゃなんか言われるかな。でも,昼食後ののんびりした時間帯だったためか,看護師ものんびりしていて,ワタシが前を通っても顔も上げなかった。


面会に来て病室を探すふりをしながら,廊下を奥までゆっくり歩く。もちろん,両側の病室の様子をチェックしながら。


部屋は4人部屋が多い。ガラス窓から,明るい光がいっぱい差し込んでいて,明るい病室。ベッドとベッドの間隔も十分広い。廊下も広くて,清潔なカンジ。

しかしベッドに横たわる患者さんは,どの人も,真っ平らに寝ている。備え付けのテレビを見ている人もいるにはいるが,たいていの人は,静かに眠っている。あるいは,口を開けて空を見つめている。テレビを見ている人も,ベッドは真っ平らなままだ。つまり,ベッドをギャッジアップして,本を読んだり,テレビを見たりしている人がいないのだ。もちろん,ベッドから降りて車椅子でどこかへ行っている人もいない。規則正しく並んだベッドに,患者さんが綺麗に並んで横になっている。。。

一見して,要介護度の高い人たちの病棟だとわかる。でも,気管切開している人や,人工呼吸器をつけているような人はあまり目につかなかった。なぜだろう?あまり重篤な状態の人は,医療型の病院へ移るのだろうか。


普通の病院の病棟と違うところ。面会に来ている家族の姿が圧倒的に少ない。見たのは数人だった。それも,静かにオムツの整理をしていたり,枕元に座って,小さな声で文庫本を読み聞かせていたり。。。きっと,もう,家族ができるコトがほとんど無くなった患者さんたちだからだろう。家族がきても,話もできず,わからない人も多いのかもしれない。


1人だけ,ベッドに起きあがって座り,医者と何かを話している患者さんがいた。「ベッドに自分で座れる人なんだ」と,ちょっとビックリした。ちょっとこの病院には,早い人だな。。。でも,それなら,父はどうなんだろう?


廊下の壁には手作りの折り紙などが飾られている。「食堂」とプレートのかかった部屋があったが,ここに移動してきて食べられる患者さんが,どのくらいいるのかな?廊下の中程には,明るくて温かい雰囲気のちょっとした談話スペースもある。ここに患者さんが憩うコトってあるのかな。療養型の病床には,食堂などの設置が義務づけられていると聞いたコトがあるから,その名残なのかな。


そのままエレベーターにのり,3階と2階も,ドキドキしながら歩いた。どの階も同じだった。静かで広くて,明るくて。。。。。うめいている人や,大声を出している人はいない。廊下に,気持ちの良い風が吹いているような気がした。なんとなく,だけど,優しい「気」が流れているようなカンジがした。

「ここなら・・・イイ」と,思った。


バス停に戻ると,小雨が降り出した。少し濡れたが,阪急の駅前に戻り,ちょっと考えて,もう1つ,見にいくコトにした。

隣町にあるK病院へ。ここは,ソーシャルワーカーに相談しているなかで名前の出た病院だ。すぐに入れてくれそうな雰囲気だった。


駅前のごちゃごちゃした所に,突然あった。敷地が狭い分,上に高く伸びている。5階建てだ。入り口のドアから入ったとたん,受付にいた2人の女性が,そろってこちらを見た。病棟へ行くには,外来のロビーを抜けていかねばならない。明らかに,呼び止められそうな気配に負けてしまった。

また外に出る。正面入り口だけでなく,通用口にも,「関係者以外の面会・立ち入りお断り」の貼り紙がデカデカと貼ってある。ガードが堅い。。。。。


外側から病室の天井が少しだけ見えた。カーテンレールの間隔から,ベッドの間隔もそんなに広くなさそうだな,と思う。ここは,一般の病棟の中に,「療養型」の病床があるのだ。きっと,フロアが分かれているのだろう。でも中の様子がさっぱりわからない。


隣には,同系列の病院が1つある。が,「休診しております」の札がかかり,真っ暗だ。休診というよりも,どうみても廃業したカンジなのだが。ネットでこの病院を検索している時,この休診中の病院のほうで,なにか不祥事があったと読んだコトがあった。そのせいかな。。。


どうも,よくわからないというか,いやにガードが強いのが,怪しいカンジだ。


あきらめて,地元の駅に戻る。もう3時前だ。

あまりにも空腹なので,おそいお昼を食べるコトに。中華料理屋で,中華丼を。ワカメスープと野菜サラダつき。美味しい。。。


美味しいモノを食べる時,父のコトを考えてしまう。すると,申し訳ないような気持ちが沸き上がってきて,美味しさを半減させる。
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by rompop | 2007-09-06 23:28 | ホスピタル


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