2007・7・30 高熱。

今日の昼間は,母と弟が病院へ行ったはずだ。

気になって,夕方電話してみた。弟が出た。「パパ,どうだって?」と聞くと,「自分から『じゃあ,やってもらおうか』って言った」とのコト。

「やっぱりどうしてもイヤだ」と言われたら,それはそれで,「どうしよう。説得したほうが良いのだろうな・・・」と悩むだろう。とりあえず父の身体のため,もっと言えば,より確実な生命の維持のためには,それしかないのかな,と思う。

これからも,栄養を経口だけに頼るのは,正直危うい,と思う。まるで,バランスを失って,今にも落っこちそうなヤジロベエを間近で見ているような気持ちになる。弟に言わせれば,今の父は「下りのエスカレーターを,逆向きに一生懸命昇らされているような」カンジだと。


けれど,そんな理屈は抜きにして,やはり,腹に穴を開けられ,チューブをつけられる気持ちは想像するだけで,苦しい。誰だって,イヤに決まっている。泣きたくなるだろう。


「楽しみ程度には,口からも食べられますよ。元気になって,たくさん食べられるようになったら,いつでもチューブは外せますし,穴もすぐに閉じることができますからね」

医者は言う。でも,楽しみ程度でも,父はもう,母の作った八宝菜も,玉葱の天ぷらも,バナナも,それらの好物は食べられないだろう。食べられたとしても,嚥下障害のある人間には一番食べやすい形状の,ヨーグルトかゼリーだろう。元気になっても,たくさん食べられるようになって,チューブを抜くことなど,あり得ない希望だろう。


電話を切ったあと,わかっていた結果なのに,落ちこんだ。


今朝の父は,熱もさがってきて具合も悪くなく,主治医のOKが出たので,昼食を少し食べたらしい。土曜の昼から絶食だったから,相当腹も減っただろう。弟が昼食介助をしたらしい。全部は食べられなかったが,「無理しない程度に」とのコトだったので,時間をかけて半分ぐらい食べたらしい。


夕食も介助が必要だと思い,急いで事務所を出た。電車に乗りながら,胃ろうの手術の前に,なんとか父の好物のバナナを食べさせてやれないかな,とずっと考えていた。

言語療法士のセンセイに相談してみようか。元の形状は無理にしても,できるだけ味を損なわない形状で,たとえば細かく刻むとか,粗くすりつぶすとか。煎餅ではなくバナナなのだから,望みはある。どうしてもダメだったら,バナナをミキサーにかけるとか,ババロアみたいにしてもらえたら。。。頼んでみる価値はあるな,と思う。

それとも,少し細かくして,こっそり食べさせてやろうか。2口3口でもいい。なんとかイケるような気もするなぁ。



病室に着いたら,父は寝ていた。日勤の看護師さんが飛んできた。父の熱は,39度6分まで上がっていた。


どうやら,昼食を少し食べさせ,夕方からいっきに熱が上がったらしい。「昼食を誤嚥して炎症を起こしたのでは」と看護師さんは言う。食べられる,と判断してOKを出したのは,主治医じゃないのか?いちおう,言語療法士が事前に飲みこみ具合などをチェックしたらしいのだが,やっぱり無理だったのか。。。

今朝は調子が良かったため,早く点滴をはずしてやろうと,今日一日分の抗生剤は早いうちに打ってしまったらしい。だから,もう,熱が上がったからといって,さらに追加するコトはできない。抗生剤は,一日に使える量が決まっているらしいのだ。

仕方がないので,解熱のために座薬を入れた,とのコト。1~2時間で熱が下がれば良いのだが。

酸素量は92。少し落ちている。


主治医は帰ったあとだったので,副院長が診察をしてくれた。聴診器で胸の音を聴き,「左の肺がバリバリ言ってます。やはり誤嚥した可能性がありますねぇ」と言う。

水分補給の点滴と,酸素吸入をして,様子を見るという。食事が肺に入って炎症を起こしていたとしても,熱が下がれば炎症が抑えられたというコトだ。熱もさがらず,反応が鈍いようなら,隣の急性期病院に真夜中でも搬送する,とのコト。


父の身体はとても熱い。顔をのぞきこんで,「しんどいか?しんどいやろう?」と聞くと,いつもなら「大丈夫」というのに,「しんどい」と言う。


バナナのコトなど,頭から吹っ飛んだ。こっそり食べさせてやろうか,多分,イケるだろう。。。なんて考えていた。でも,ちょっとしたコトが,命に関わるのだ。


1時間して,熱は38度7分まで下がった。もう少し下がらないかな。

「喉が渇いた」というが,水は飲ませられない。


父はふぅふぅ言いながら目を閉じているが,目を開けて「何時?」と聞く。「7時過ぎ」と答えると「遅くまでいてもらわなくていいよ,悪いから」という。「もう少し,いるよ」と答える。


8時半,父の熱は37度6分になった。酸素量も96まで上がった。少しは楽になったと思う。


ふと,父のパジャマの背中や脇の下をさぐると,汗でぐっしょり濡れている。背中の下のシーツもだ。これは・・・汗が冷えて,よけいに具合が悪いのでは?

夜勤の看護師さんにお願いして,パジャマと下着を替えてもらう。シーツにはバスタオルを敷く。着替えさせられるのは,父もしんどそうだったが,やはりこのままでは・・・


結局,少し安心できるまでは,と,9時前まで病室にいた。父の口の中を少し拭いてくれるようにお願いして,帰った。


病院から,「また隣の病院へ搬送されるかも」と電話をしておいたので,母は台所に座って,ワタシの帰りを待っていた。

「パパ,熱さがってきたよ」と言うと,「本当?よかった。。。」と安堵したようだった。弟の部屋の前で,「パパ,熱下がったから」と言うと,「ふうん」と中から返事が聞こえた。なんだ,こいつ??それだけか?心配じゃないのか?と,頭にくる。


母に今日の父の様子を聞いてみた。やはり,父の気持ちを聞く,というよりも,説得したような形になってしまった。父は,弟の説明を聞いていたが,黙ったままなにも返事をせず,母はそんな父の様子を見て,「やっぱり,イヤなんだろうな」と感じたという。

弟に「お母さんからも説明して!」とせっつかれて,「パパ,もう,仕方ないなぁ。。。このままでは身体も弱ってくるし,また熱が出たり肺炎になったりするかもしれんし。。。」と言い出して,父が可哀相で,涙が出てきたらしい。

父は母の様子をじっと見ていて,「ママ,そんなに心配せんとき」と言い,「・・・じゃあ,手術をやってもらおうか」と言ったという。そのあと,もう一度,「もう,一刻も早くやってもらおうか」と言ったらしい。


多分,父には,「それでもやっぱりイヤだ」とごねる余地はなかった。本当にフェアに,「どちらにする?パパの身体のコトなんだから,パパが選んでいいよ」と,余地を用意してやらなかった。



いい加減,正直に言おう。

父の身体のためには。。。と真剣に考えた。これは本当だ。父の本心はわからないが,ワタシは,父には,少しでも長く生きて欲しいと思った。


でも,その理由をすべて差っ引いたとしても,父を自宅でみるコトができない以上,ワタシたち家族は,父の気持ちだけを優先して,単純に動くわけにはいかないのだ。



「どんな状態の人も,いつでも,どうぞ。そして,好きなだけ居てくださいね」

そんなユートピアのような場所があったら。
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by rompop | 2007-07-31 19:06 | ホスピタル


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