2007・7・29 ② 「胃ろう」。

4時半頃,父の病室へ行った。

父の熱は下がっていた。看護師さんに聞くと,午後は36度9分ぐらいだったという。抗生剤や水分補給が効いているようだ。脱水症状に近かったので,熱も下がりにくかったのかもしれない。

母が帰ったあとも,父は看護師さんや,看護助手さんに,からかわれていた。「ホンマに嬉しそうやったねぇ,○○さん。」「綺麗な奥さんやったねぇぇ。」などと言われて,恥ずかしげもなく,「でへへへへ・・・」と笑っていた。ワタシから見ても,嬉しそうな顔だった。


ただ,母が帰ってしまったあと,一時的に不穏になったらしい,とこっそり教えてもらった。「淋しくなったのかな」と看護師さん。気を紛らわせようと,テレビをベッドに向けて,見せてやってくれたらしい。そうしたら,気分が治ったとか。


父は,ずいぶん具合も楽なようで,ハイテンションのまま,ペラペラ喋る。ホントに驚くほど,頭がしっかりしている。言葉もわりと明瞭だ。水分って・・・・ホントに大事なんだなぁ。

ちょっと元気な父を見ていると,「胃ろうなんて・・・」という気持ちがわき上がる。でも,口からではなく,点滴だから,こうやって必要十分な水分がちゃんと補給され,こんなに身体に変化が現れたのだ。考え違いをしてはいけない,とも思う。


胃ろうの話を切り出すのに,「僕から話そうか?」と弟は言った。でも,それはイヤだと思った。合理的に淡々と,父の気持ちを考えずに話して欲しくなかった。弟が話すなら,ワタシが話したほうがマシだ,と思った。

あるいは,パパの頭がクリアなうちに,明日の夕方,母も連れて3人で父に会いにいき,話をしようか?とも。

それに返事をしないまま,家を出てきた。


いっきに3人がやってきて,ベッドを取り囲み,話すのか。父に選ばせるのではなく,「パパ,どうする?」と言いながらも,なかば「説得」するために。

それって・・・・どうなのかな。どう話してもショックはショックだけど,状況的にかなりヘビーなのでは?


そんなコトを考えながら,父とぽつぽつと話をしていた。父は機嫌がヨカッタ。それに,父のほうからやたらと,自分の病気や入院のコトを尋ねてきた。「肺炎のときは,どれぐらい隣の病院にいたの?」とか,「それでこっちへいつ戻ったのか?」とか。「最初に救急車で運ばれたことは,ちゃんと覚えてる」とも。

今なら,話せそうな気がする,と思った。いつもは頭がぼんやりしているか,頭はハッキリしていても疲れてしまっているかだから,こんなにたくさん,ちゃんと会話が成立するコトは,滅多にない。


勇気が要った。何度も生唾を飲みこんで,言葉に詰まりながら,話し始めた。途中で,「アカン,こんな言い方では伝わらへん・・・」と何度も思った。でも,話し出した以上,止めるわけにいかない。

ほかの患者さんたちは,夕食の配膳についていて,病室はワタシたちだけだった。


ワタシでさえ,父が入院するまでは,「胃ろう」なんて処置があるコトを知らなかった。見たことも聞いたこともなかった。初めて,お腹からチューブが出ている患者さんを見たときの衝撃は忘れられない。

ワタシでさえ,時間をかけてネットで情報収集し,写真や図解を見て,やっと前向きに捉えることができはじめたところ,なのだ。

父には,ものすごい衝撃だろう。外から胃に栄養を入れる??お腹に穴を開ける???


父をムダに怖がらせないよう,でも,ある程度正直に,でもなるべく前向きに希望を持って,話をした。

「胃ろうをしても,飲みこみの具合が良ければ,ヨーグルトやプリンぐらいなら,食べられるって」とワタシは言った。でも,「食べられるようになれば,胃ろうをいつでも外すコトができるよ。穴もすぐにふさがるよ」とは,言えなかった。そういうモノらしいが,父には,それは多分,ありえない希望だから。


「お腹に穴を開けるの??」と父は驚き,「・・・・イヤだなぁ」と言った。そりゃ,そうだろう。

何度も医者から勧められたコト,栄養状態がずっと悪くて,抵抗力も落ちていて,またいつ,熱が出たり肺炎になったりするか,わからないコトも話した。

飲みこみや喉の具合は,脳出血の後遺症だから,パパが自分でがんばっても,コントロールできない部分があるというコト。知らない間に,気管や肺へ入っていってしまうコトはどうしようもないんだと。

「そりゃ,イヤやと思うけど。。。ワタシもいろいろ調べたりしたけど,そう悪い方法でもないと思うよ。栄養がちゃんと身体に入るんやから」と重ねた。


「パパ,どう思う?」と聞くと,「どうって聞かれても・・・仕方ないなら,仕方ないじゃないか」と父は,なかばあきらめたように,言った。


でも,「じゃあそうする」とは言わなかった。当然だろう。「少し考えるわ」と父はいい,目をつぶった。「キツイ話やったなぁ,ごめんな」と謝ると「・・・熱出てきそうや」と父は言い,苦笑いした。

ワタシの話し方は,現実をありのまま,ではなく,多少偏っていたかもしれない。これでヨカッタたのだろうか。


席をはずして,家へ電話をかけ,父に話した,と弟に告げた。「え?もう話したんか??」と言われたが,「3人で囲んでいきなり迫るのは酷やと思ったから」と言った。

明日,母と弟が行き,特に母から直接,話をしてもらうコトにした。父はきっと,ワタシでも弟でもなく,母からちゃんと話をしてもらい,母の意見を聞きたいだろう,と思った。


部屋にそっと戻ると,父は目を開けた。しばらくベッド脇にいたが,7時過ぎに「もう帰ってくれていいよ」と父が言った。母から,「お姉ちゃんも毎日,ホンマに大変やねんから。毎日9時過ぎに帰って,それからご飯とお風呂に入って。。。」と聞かされたせいだろうか。「いてもらっても,してもらうコトもないし」と。

もしかしたら,父は一人になりたいのかもしれないな,と思った。帰るコトにした。


帰りがけに熱を測ったら,37度7分。本当に熱が上がってしまった。。。
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by rompop | 2007-07-31 17:04 | ホスピタル


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