2007・6・13 不機嫌。

病室に着くと,父は寝ていた。夕食の膳はサイドテーブルに置いてあるが,6時半過ぎなのに,同じ部屋の人たちも,まだみんな寝ている。

父が目を覚ましたので,「ごはん食べるか?」と聞くと,「まだいいや」と言う。規則正しいリズムは大事だと思い,「でも時間だから,食べよう」とベッドを手動で起こす。少し起こしたところで,「これぐらいでイイよ」というが,まだ30度ぐらいしか角度がついていない。こんなでは食べられないし,第一,食べにくいだろう。


それでも今日は,ベッドを起こされるのが,とてもキツイようだ。「もうイイ」とばかり言う。何か原因があるのかと思い,足が曲がっていないか,腹が圧迫されていないか,など,チェックしたがわからない。少し下のほうに身体がずれていて,変に曲がってしまいそうなので,部屋にきた看護師さんに頼んで,少し身体を上へずらしてもらう。父の身体をベッド上で動かすのは,きっと楽にできるコツがあるのだろうが,ワタシにはまだまだ難しい。


そうやっておいて,またベッドを起こすと,「もう,いいよ!」と苛立つので,「起こさないと食べれないじゃん」と言うと,「じゃああとでいいよ。食べるのは別に何時になったっていいんだから」と言い返す。「いちおう食事の時間があるんだから,その時間に食べないとアカンよ」と言うと,「じゃあ,そんなもん(食事),放棄する」と言う。


。。。今日はどうしたことか,ものすごく機嫌が悪い。というか,ちょっといつもの父ではない。


「まぁ,そう言わずに」と,なんとかベッドを起こして,父は食べ始めたが,機嫌が悪くて何かイライラしているくせに,躁状態のようなカンジで,やたらに喋りたがる。「食べている時は喋らないで」と言ってあるのに,言うコトを聞かない。


「よくもまぁ,こんなマズイものを作れるね」「マズイのはわかるけど・・・仕方ないやんか」「こんな食事を3食食べて,××電車に乗って働きに行けると思うか?」「・・・・・」「まったく,恐れ入ったね」

「・・・さっき,二人も来てね」「?誰が来たって?」「もうイイよっ!!」


かと思うと,食べている最中に股間を押えてじっとしているので,驚いて「どうした?」と聞くと,「オシッコ出た」という。「あぁ・・・でも,オムツしているから大丈夫や。あとで替えてもらおう」と言うと,「オムツ?男用と女用とどっちかなぁ?」と言う。「大人用のやつだから,特に男も女もないよ」「オムツは僕だけかなぁ?」「いや,みんなトイレに自分ですぐに行けないから,ここの人たちはみんな,オムツしてると思うよ」「××電車に乗ってるサラリーマンもしてるかなぁ?」「・・・・・サラリーマンはしてないと思うけど・・・・」


おかしい。。。少し精神状態が高揚しているというか。

おまけに,食べている最中に,看護師さんがやってきて,明日の血液検査とレントゲンのコトなどを説明するものだから,父の気が,おおいに逸れた。そのせいか,途中で何度かむせた。


病院で具合が悪くて寝ているばかりで,しかも,唯一の楽しみの食事は,三度とも最低レベルの味とビジュアルだし,おまけに,昼食も夕食も,弟とワタシが見張っているようにして,「集中しろ」だの「ゆっくり確実に食べろ」だのアレコレいうものだから。。。。ストレスが溜まっているのだろう。それは良くわかる。でも。。。どうすればイイのか。


1時間かけて,3品を完食。薬を2種類飲ませて,歯を磨かせると,父はもう,ぐったりだ。ヒゲが伸びていたので,手早くシェーバーでヒゲを剃る。


ところで,オムツ。

さっき食べている最中に排尿があり,それを告げると,「食べ終わったら見ますね」と看護師さんは笑顔で言ってくれたのだが。。。待てど暮らせど,来てくれる気配はない。もしかして,就寝時間に夜用のオムツに替えるから,その時でイイや,と思っているのでは?


「パパ,オムツ濡れてる?気持ち悪いなぁ?」「いや,そんなにわからないからイイよ」

いや,気持ち悪いはずだと思い,しかたなくベッドを倒してオムツを点検。オチンチンをくるむように巻かれている尿取りパッドは,ぐっしょり濡れてずっしりと重い。その外側にあるプレーンタイプのオムツも,少し濡れて跡がついている。ううむ,これは,ワタシたち女性が「あの日」の2日目に,限界までトイレに行けなかった時のカンジと同じだ。気持ち悪いに決まっている。


新しいオムツを収納棚から出して,慣れないオムツ交換に悪戦苦闘した。幸い,一番外側が「履かせるタイプ」のオムツだったので,父にも協力してもらい,なんとか上手く替えるコトができた。父はまだ,ベッドの上で膝を立てれば,腰を少し浮かすコトができるのだ。「どう?」と聞くと「あぁ,気持ちよくなった」と父。そりゃそうだ。そうに決まってる。


濡れたオムツを捨てに行く。


父の隣のベッドにいる失語症気味の食事なし・点滴のみの患者さんは,父が食べ始めた頃,どうやら排便してしまったらしい。気づいた看護師さんが,「○○さん,ごめんね。今お食事時間だから,もう少し我慢してね。あとですぐに替えるからね」と,その患者さんに言っているのが聞こえていた。

部屋の中で,父が一番最後に食べ終わったので,その看護師さんに,「食事終わりましたから,(オムツ交換)どうぞ」と声をかけた。その看護師さんは,笑顔で「あぁ,どうも」と言われただけで,いっこうに替える気配がない。


とうとう,ワタシが父の病室を出る8時半まで,その患者さんのオムツはそのままだった。忘れてしまったのだろうか。それとも,あの人たちのいう「あとで」というのは,いったいどれぐらい「あと」のコトなんだろう?


どの病院でも,看護師さんの手は足りない。廊下を行き来している,どの看護師さんも忙しそうだ。でも一方,詰め所をのぞくと,お喋りをしながら笑い声をあげている若い看護師さんたちの姿もあったりする。複雑な気持ちになる。ワタシは看護する側の人たちに,ちょっと厳しすぎるのだろうか,と思う。でも,どこか信じ切れないところがあるから,やっぱり毎日,少しでも病室に行かなくては,と思ってしまう。


オムツを替えたあと,父は「なんだかしんどい」と言い出した。胸が苦しいか?というと,そうだという。ナースコールを押して,酸素量を計ってもらう。90以上あり,正常だという。「なにか胸に詰まっているカンジ?」と看護師さんが聞くと,「そう」と父。吸引をしますね,と看護師さん。父の嫌いな吸引だが,楽になるなら仕方がない。お願いします,と言って,帰る。


痰の吸引は,医療行為だから,看護師さんしかできない,と聞いた。ヘルパーさんはできないそう。でも,家族なら素人でもできるのだそうだ。おかしな話だ。吸引って,難しいのかな・・・・・



帰宅。

焼き魚(さわら),豆腐とワカメの味噌汁,母特製のポテトサラダ,玉子焼き。


寝る前にふと思った。父が,「こんなマズイものばかり食べて,××電車に乗って仕事に行けるか?」と言ったのは,ワタシに対して,「お前ならどうだ?」という意味だと思っていた。でも,「サラリーマンもオムツをしているかな」とか言っていたし,もしかしたら父は,少し自分の実年齢よりも逆行しているのではないかな?

父は長く法務局を勤め上げたあと,定年後は知り合いの登記事務所からお声がかかり,司法書士をやっていた。その登記事務所は,天王寺のあたりにあり,父は××電車に乗って,そこまで通っていたのだ。こんなモノしか食べられず,オムツまで着けて,自分は仕事に行けるのか?と考えていたのではないかしら。。。。?
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by rompop | 2007-06-13 15:04 | ホスピタル


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