2007・6・2 「怖い!」。

軽い眠剤を飲んだおかげで,ぐっすり眠れた。10時起床。

自分の洗濯と掃除。あひるご飯は,ツナ巻とそうめん。

3時に美容院の予約。自転車でダッシュする。相談すると,ワタシのしたいスタイルにするには,デジタルパーマが必要らしい。3時間かかるというので,今日はマズイな。来週に予約を入れて今日はキャンセル。


その足で電車に乗り,父の病院へ。

3階病棟に着くと,父は車椅子に乗せられ,しかめ面をして,看護師詰所にいた。ビックリして「パパ,どうしたん?」と声をかけると,しかめ面が崩れた。看護師さんたちが,「娘さんが来られたよ」と,父の車椅子を病室に戻してくれた。

「何かありましたか?」と尋ねると,「朝のうちは辻褄(つじつま)のあう会話をされていたのですが,午後になって。。。」と。それから,夜中のうちに左手の点滴の針がはずれ,液がもれてシーツなどが濡れたため,点滴の針を左足の足首に固定した,とのコト。どうして針がはずれたかは,詳しい説明はなかった。父が自分で抜いたのか,どこかに引っかかったのか。。。


父の様子がおかしい。なんだか,ものすごく興奮している。顔も赤いし,ロレツの回らない口でさかんに何かをまくし立てているが,よくわからない。そして,肩で息をしながら,とても苛立っている。


担当の看護師さんがやってきたので,昨日から気になっていた,絶食の再開の目処と,再開されたらしい血流をよくする薬について,質問した。すぐに主治医のMドクターを呼んでくださったので,くわしく説明してもらうコトができた。


食事については,とりあえず,熱が引いて肺の影がなくなり,血液中の白血球が減って具合が落ち着いてから,とのコト。誤嚥性肺炎なのだから,当然か。経過は個人差があるからはっきりとは言えないが,だいたい1週間前後は絶食らしい。空腹はどうしようもないから,本人にはとても辛いな。。。

現在の点滴は,1日2回の抗生剤と,ひと袋400キロカロリーの栄養を1日3回。栄養といっても,水分補給と10%の糖分なので「ポカリスエット」みたいなモノ。1日で1200キロカロリーだ。あまり動かずにじっとしている分には,必要最低限のカロリー。
これ以上,量を増やすと,心臓に負担がかかり,身体にむくみなどが出る,とのコト。通常,2週間ぐらいまでは,この点滴だけで医学的に問題はないらしいが。

その間に,嚥下の状態を言語療法士が評価して,嚥下食の再開を試みる。口からの栄養がうまくいけば良いが,肺炎が長びいたり,経口での栄養が無理で,今の点滴が長びく場合は,高カロリーの点滴をしなくてはならない。しかし,これ以上濃い高カロリーの栄養は,今のような末梢血管では耐えられないそうで,もう少し太い血管。。。足の付け根から心臓近くまでカテーテルを入れて点滴液を流しこむ「中心静脈栄養」になるそう。

カテーテルと聞くと,すぐに「感染症は大丈夫?」と思ってしまう。聞くとやはりそのリスクはあり,発熱などしたら,すぐにカテーテルを抜いて中止しなくてはならないそう。カテーテルを入れた部分が,細菌の巣窟になってしまうと怖ろしい。これでダメなら,腹から胃にむけて穴を開けてチューブを入れる,『胃ろう』になってしまう。

若い主治医のMセンセイの,素人にもわかる丁寧な説明でやっとよく理解できた。


次に,投薬について。


父はもともと,微少の脳梗塞があり,血液をサラサラにするため,『ワーファリン』という薬を多量に服用していた。ところが,脳梗塞ではなく,脳内出血を発症したので,当然,12月9日以降,この薬は中止されている。

今回,肺炎を起こしたため,心臓に負担がかかってはいないか,念のため,心電図や心臓エコーの検査をした。父は,心房細動(不整脈)があるのだ。

その結果,ワーファリンと同じ作用のある,抗凝固剤『バイアスピリン』が処方された。心房細動があると,血液中に血栓ができやすいという。この血栓が脳に詰まれば,脳梗塞を起こす。

「切れる」リスクと「詰まる」リスク,これはドクターの判断の分れるところだ。どちらかのリスクが減れば,どちらかが増える。

ただ,父の今の心臓の状態では,いつ血栓ができてもおかしくないコト,発熱して身体が水分不足であり,常よりも血液が濃厚になっている状態を考えて,やはり,投薬するコトに決めた,とのコト。ただし,ワーファリンよりは若干弱めのバイアスピリンを朝1回。週に2回,血液検査をして,血液の状態を確認しながら,量を探っていくという。もう,これは,ドクターの判断に任せるしかない。脳内出血が二度と起こらないように,祈るだけ。


その他,こちらに搬送されてから中止していたその他の薬も,一部,再開された。


とりあえず,ハーフジゴキシン(心臓の薬)0,5錠を朝1回。エリスロシン(抗生剤)を朝1回。父の希望で,フルニトラゼパム(睡眠導入剤)を就寝前に1回。

朝夕2回のイクロール(胃薬)と,毎食後のビオフェルミン(整腸剤)は,頃合いをみて再開するとのコト。

血圧は安定しているため,朝1回のロンゲリール(降圧剤)と,同じく朝1回のエブランチル(前立腺癌による排尿障害の薬)は,中止されたままだ。エブランチルは,血圧を下げる副作用があり,一時的に低血圧になった時に中止されたまま。


父はどうやら,薬のコトを自分で主治医に質問したかったらしい。「ワーファリンが○×△。。。」としきりに言っているが,よくわからない。おそらく,「ワーファリンを飲まなくて大丈夫か?」と聞きたいのだろう。脳内出血で倒れるまで,この薬は,父にとって一番大事な薬だった。倒れてから中止されているコトは,記憶から抜け落ちているのだろう。

父の気持ちがわかったので,先回りしてワタシが聞いたのだが,自分の頭越しに,主治医とワタシが延々喋っているコトが,かなり腹立たしかったらしい。イライラと上を見上げながら肩が上下しているので,「落ち着いて」というつもりで,父の肩をぽんぽんと叩いた。父はいまいましげに,ワタシの手を強く振り払った。


主治医が去ったあと,父はベッドに横になった。ワタシもベッド脇に座り,ぽつぽつとコミュニケーションを試みたが,本当に今日は,半分ぐらいは何を言っているのか聞き取れなかった。父の話す内容も,幾分,シュールで面食らう。


朝,窓のすぐ外に消防車がきて,大騒ぎだったとか。向こうが「おーい」と手を振るので,自分も大声で「おーい」と手を振り返した,とか。

2つほど隣の4人部屋にいる男性が,昼も夜もなく,30秒置きぐらいに大声で「おーい」と看護師さんを呼んでいる。その声を勘違いしたのだと思う。


いつまでも興奮して怒っているようなので,理由を聞くと,「薬のコトを聞きたかったのに,誰もすぐに来てくれない」とか「点滴を断りもなく,勝手に足にされた」と言う。ワタシにも怒っているようなので聞いてみると,「肩をぽんぽんとされるのは,馬鹿にしている」のだそうだ。


気を紛らわそうと,自宅の生け垣の木が生い茂ってきて,いよいよ,植木屋に剪定を頼まねばならないコト,毛虫がたくさん湧いて,大変なコトなどを話す。父は庭いじりが好きだったので,園芸の話なら,食いついてくるのだ。


ところが,夕方になり,外が暗くなりだしてからは,落ち着くどころか,ますます様子がおかしくなってきた。


「ベッドが高くて怖いから低くしてくれ」と言い,「これ以上低くはできない」と言うと,怒り出す。「生け垣が高くて怖いから,高さは自分が決める」だの「天井が降りてくる」だの。しまいには,「いくら言っても,ベッドを低くしてくれないから」と怒りながら,「よいしょ,よいしょ」と,ベッドの下のほうにどんどん身体をずり落としていく。どうやら,足元のほうの低い柵から,ベッドの下へ降りようとしているらしい。あわてて,押さえ込んで揉めているところへ,夜勤の看護師さんが「どうしました?」とやってきた。

初めてみる看護師さんだったが,とても優しい人で,父をなだめながら,検温をした。父は看護師さんの手を握って放さない。熱は,37度5分あった。上がってきている。アイスノンをしてもらう。酸素量も足りないようで,また鼻から酸素チューブを入れられた。興奮したから熱が上がったのか,熱が上がってくるから,朦朧としているのか,よくわからない。

前にいたリハビリ病院に比べて,ベッドは少し高いかもしれません,とのコト。また,個室で慣れない白い部屋に1人のため,圧迫感があるのかもしれませんね,とのコト。天井ではなくて,窓からの景色が見えるよう,父の体位を少し横向きに変えてくれた。


それからも父は,しきりに喋りまくっていたが,生け垣の話などするのではなかった。「蓑虫が胸に乗っている。たくさんいる」と言って,パジャマから何かを振り払っている。「虫なんかいないよ」と言っても,「そう言うと思った。はいはい,お帰りください」と怒る。こういう時の対応に,ワタシはまだ,全然慣れていない。


今自分がいるのが,自宅なのか病院なのか,わからなくなっているようだった。「ここは誰の持ち物だ?」「病院だから,病院のオーナーじゃないかな」「じゃあ,世帯主は僕じゃない?」「そうやね」「じゃあ4人の家の所有権はどうなるの?」


急に耳を澄ませて「なんか言ってる!」という。隣の部屋から「所有権が乗っ取られるぞ」と声がするらしい。「誰が乗っ取るって?」「東高校に乗っ取られるらしい」

「この部屋は見たことがないが,どこかなぁ」「天井が降りてくる件の結果はどうなった?」「ここの番地は何番だろう?」


鼻の酸素チューブを「気持ち悪いからもうイイや」と外そうとする。「勝手に外したらアカン」というと,「そうか」と納得するが,数分後にはまた外そうとする。


3時半頃からずっと父の傍に座っている。たまらなく疲れてきた。7時ごろ,帰ろうとすると「帰らないでくれ」と言われる。なにかひどく不安なようだ。あきらめて,面会時間が終わる8時まで,父の話につきあった。一時的に混乱しているだけでありますように。このまま,父がおかしくなってしまいませんように。夜中に,暴れませんように,熱が上がってきませんように。。。と思いながら。


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体力よりも,精神的にヨレヨレになって,9時に帰宅。

夕食は,小松菜と揚げの吸い物,カツオのたたき,キュウリの中華風浅漬け。

余計な心配をかけるので,母には黙っていようと思ったが,「パパ,今日はどうだった?」と言われて,つい全部喋ってしまった。
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by rompop | 2007-06-02 18:44 | ホスピタル


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