2007・5・5 父の,プライド。

子供の日。といっても,子供のいないワタシには,全然関係のない祝日だ。今日は,さぞ,動物園や水族館なんかが賑わっていることだろう。

さて。「病院,行けそう」と母が言うので,今日は母を同伴して,タクシーで病院まで。タクシーの振動が腰に響くと怖いので,乗りこむなり,「母が圧迫骨折中なので,なるべく静か~に走ってください!」と運転手に告げる。行きも帰りも,運転手さんはビビッてしまって,ソロソロと安全運転してくださった。


母が見舞いに行くのは,もうずいぶん久しぶりだ。最後に一緒に行ったのが,2月の19日だったと思う。もう二ヶ月半ぐらい前だ。。。

父には当然予告なしだったので,昼食中の父の前に,ワタシと母が同時に現れた時の,父の顔。。。

スプーンを持ったまま,「鳩が豆でっぽう」といった風に,しばしポカンとして,母の顔を見つめていた。あまり長い間,無言で母を見つめているので,「ま,まさか,顔を忘れたんじゃ・・・」と,怖ろしくなったが,母がすかさず,「顔,忘れたんか??」と聞くと,たちまち,父は相好をくずした。隣で介助をしていた看護師さんが,「あ。○○さん,すっごく嬉しそうな顔!」と思わず叫ぶ。


ホントにお互い,久しぶりだものなぁ。そりゃ,嬉しいだろう。ワタシはどちらの顔も,毎日見ているからわからないが,久しぶりだと,やっぱり少し変わってしまっていたようだ。

母は,頭を怪我して以来,髪を染めるのをやめたので,もう全体の半分ぐらいは,白髪になっている。それはそれで,柔らかいカンジがして良いのだが,少し白髪が目立つと,マメに栗色に染めていたから,いっきに「年寄り臭く」なったにちがいない。父は,母の頭頂部の白髪ばかり,見ているような気がする。

父は父で,すごく痩せてしまったから,母は「痩せたなぁ」と父の顔を眺めている。でも,痩せたけど,顔色は赤味があって健康そうだ,とも言う。


父は嬉しそうだったが,少し集中が切れたせいか,何度かひどくむせた。口の中の食べものが,口の周りにたくさん飛び散った。母は,正直,驚いたようだ。「可哀相やなぁ」と言いながら,父の前に椅子を置いて,父の様子をじっと見ている。

むせがひどいので,おかゆは少し残す。それでも,ラブレも飲み,ほかのものは,ほとんど食べた。今日の所要時間は90分ぐらい。こんなものか。


歯磨きのあと,部屋で喋ろうかと思っていたが,同室のNさんにも奥さんが面会に来ていて,「淋しい淋しい」と,なんだかとても甘えている。喋りにくい雰囲気なので,「外へ行く?」というと,父は,もうすっかり日光浴の味をしめたのか,「外へ行く!」と喜んでいる。

母を気遣いながらも,一緒に外へ降りる。ツツジのところに,車椅子を止め,近くの段々に母を座らせる。たくさんのお日様を浴びながら,父と母は,ぽつぽつと会話している。


せっかくだから,リハビリがわりの運動をさせようと,いつものように,父に足踏みや手を挙げさせる運動をさせた・・・・・ここでワタシはちょっと失敗した。

いつも父にさせているコトや,今の父のありのままの姿を母に見てもらいたくて,ついつい,はりきってしまった。嫌がっている父に,無理矢理「いち,にぃ,さん,しぃ」とかけ声をかけ,いろいろ運動をさせようとした。父の気持ちも考えずに。

父は,母の前では惨めな姿はあまり見せたくなかったようだ。ちょっとでも「いい格好」したかったのだな。父のプライドだ。その証拠に,いつもより,左足がとてもよく上がっていた。相当無理したのだ。

「すごいすごい」と喜んで,次は首を回す運動をさせようとしたら,途中で,「もう,いいよ!!」とかんしゃくを起こしてしまった。いっきにイヤな空気になってしまって,しばらく3人とも黙っていた。


「日焼けするからもう中へ入ろう」と母が言い出したので,部屋へ戻るコトにした。部屋へ戻っても,父の機嫌は治らなかった。せっかくの貴重な時間だったのに・・・パパ,ごめんな!


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そろそろ母が疲れてきたので,2時半頃,病室を出る。ちょっと早いけど,ワタシも一緒にタクシーで駅まで。

「そろそろ帰るわ」と言ったときの,父の淋しそうな顔。でも,母もまだ,要注意なので仕方がない。母も急にしんみりしたのか,「はい,握手」と父の手をにぎり,「また来るからな」などと,不確かな約束をしていた。

「見送りをする」と父は車椅子を自分でこいで,ワタシたちについてきた。1階の玄関まで送る,といって聞かなかったのだが,「1階まで来たら,パパ1人になってしまうで」と言っても,よくわからないよう。「また,ここまで押してきてもらうやん」と言う。「ワタシも,ママと一緒に帰るから,ここまで押してこられへんって」「1階でパパ1人になるで」と散々言い聞かせて,やっと「・・・そうか」とわかったよう。

見送りは,3階のエレベーターの扉の前までにしてもらった。結構,辛かった。


タクシーを呼んだあと,父の靴下がもう何日も履きっぱなしだったコトに気づき,ワタシだけダッシュで病室へ戻る。臭いだけなら良いが,母が「水虫が復活するかも」と言い出したので,妙に気になって。


父はもう,さっそくベッドに横にしてもらって眠りかけていた。ワタシの姿に驚いていたが,目が片方しか開いていない。「水虫になるから靴下替えるね」といい,いやおうなく,新しいのを履かせる。「ではバイバイ」と手をふると,すっかり笑顔で手をふる,いつもの父だった。不機嫌も長く続かないのが,イイところでもあり,頼りないところでもある。。。


駅でタクシーからワタシだけ降り,定期券を購入。書店をブラブラして,オレンジとはっさくを買い,母より遅れて帰る。タクシーにのってきたので,駅から自宅までの自転車はない。結構,キツイ。。。。。


母は久しぶりの外出で結構疲れたようだったが,「パパがあんなに喜んだ顔するなら,言ってヨカッタ」と何度も言っている。
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by rompop | 2007-05-05 15:35 | ホスピタル


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