2006・6・10 ② 『マイケル・ナイマン・バンド』コンサート2006。

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JR大阪駅から環状線で京橋まで。長堀鶴見緑地線で大阪ビジネスパーク駅下車。会場は,「シアターBRAVA!」。初めてやってきたが,なんだか,仮設っぽい劇場。。。でも,中はとても立派で綺麗。

マイケル・ナイマンは,20代の終わりぐらいに,初めて知った。ピーター・グリーナウェイ監督の初期の作品をいくつか観た時,音楽があまりにも印象的で,マイケル・ナイマンのCDを1枚買った。20代から30代にかけてのある時期,それこそ,毎日毎日,飽きるコトなく聴いた1枚だ。

ピーター・グリーナウェイの作品で今でも強烈に好きなのは『ZOO』。特に初期の作品が好きだ。『数に溺れて』『建築家の腹』など。その後,『コックと泥棒,その妻と愛人』の強烈さとグロさにギブアップし,それ以降の作品は観ていないのだけど。

もちろん,マイケル・ナイマンと彼のバンドの生の演奏を聴くのは初めてで,チケットを手に入れた時から,ワタシはずっと,軽く興奮していた。

黒いシャツに黒いジャケット,パンツの,バンドのメンバーが先にステージに登場。女性が2人。バンドは全部で11人だ。最後にマイケル・ナイマンが登場。やはり,黒いジャケットにパンツ。バンドの平均年齢は,かなり高そうだが,それにしても,みな,なんてスタイリッシュ!

グランド・ピアノ(スタインウェイ?)の前に,マイケル・ナイマンが座る。右手をあげて,軽くリズムをとって合図をし,1曲目の演奏が始まった。


プログラムの第一部は,ピーター・グリーナウェイ映画の音楽ばかり。1曲目は,『英国式庭園殺人事件』から「羊飼いにまかせとけ」。ワタシのとても好きな曲。ダークな曲調が多い中で,珍しくスカッとするような明るさがある。その後,2曲ほど演奏したあと,ワタシが1番好きな『ZOO』から数曲。いっきにボルテージがあがる。やっぱり生は凄い。ダークで重厚な音とリズム。そして,『コックと泥棒・・・』より「メモリアル」。かなり印象的な曲。


マイケル・ナイマンの音楽は,「ミニマル・ミュージック」と呼ばれる。音の動きを最小限におさえ,パターン化された音型を反復させる音楽形態。同じようなリズムとメロディラインが,少しずつ音階を変え,何度も繰り返される。マイケル・ナイマンのピアノも,「奏でる」「弾く」というよりは,むしろ「打ち続ける」「叩き続ける」といった具合。62歳とは思えない,体力とエネルギー。

20分間の休憩。この短い休憩の間にも,連打され続けたピアノの調律を,スタッフが行う。ワタシはロビーへ出て,パンフレットを買った。


第2部は,その他の映画音楽より。マイケル・ナイマンの名を一躍メジャーにした『ピアノ・レッスン』の数曲を,マイケル・ナイマン1人のピアノ演奏で。さきほどまでの,ダークな曲調とは打ってかわって,静謐な美しさ。映画もヨカッタが,映画をさらに印象的にしていたのは,やはり,この曲々だ。

続いて,映画『リバティーン』より,数曲。ジョニー・デップ主演のこの映画を,ワタシは見逃してしまった。だから内容はよくわからないが,曲はなんというか,とても美しかった。パンフレットによると「ノスタルジックでバロック風のミニマル・ミュージック」とのコト。

圧巻だったのは,映画『メイキング・スプラッシュ』からの「ウォーター・ダンス」という1曲。とてつもなく尺の長い曲だが,高いテンションのまま,どこまでやるの?というぐらいの,圧倒的な演奏を見せた。マイケル・ナイマンだけでなく,バンドのメンバー全員が,渾身の力をこめての力強い演奏。圧倒され続けた。

最後に,ゲストの中川晃教が登場して,舞台『エレンディラ』のためにマイケル・ナイマンが作った1曲を披露した。会場には,彼を観にきたファンも多かったよう。


音楽というモノは,「匂い」や「風景」と同じく,いや,もしかしたらそれらよりもずっと強く,「記憶」を蘇らせる。音楽を聴けば,その音楽を聴いていた時代や場所,その頃の感情の記憶までが,思いがけず生々しく立ちのぼってくるコトがある。

マイケル・ナイマンの少し古い音楽を聴きながら,ワタシはまた,思い出してしまった。あの頃,1枚のCDを何度も繰り返し,共有したのが,Kだった。理屈っぽいKが,ライナーノーツを片手に,いちいち蘊蓄(うんちく)を垂れていた姿を思い出した。その1つ1つのコメントまでも。

ワタシは今,あのマイケル・ナイマンを生で聴いているけれど,Kはもう,この世のどこにもいないのだなぁ,と,その事実をくっきりと思い出すと,涙が出て困った。が,隣にいる友人に悟られたくなかったので,鼻をすすりあげたいのを,我慢した。マイケル・ナイマンを聴いて感涙している,と思われるのは恥ずかしかった。


音楽でも美術でもそうだが,あまりにも力のあるモノを見てしまうと,それはもう,ただの「音楽」とか「美術」ではなく,それを創り出した人間をまるごと感じるコトになる。巧くいえないが,その人間の,パッションとか,エネルギーとか,想いとか,そういうモノだ。

ワタシが,最終的に今夜の演奏で感じたのは,旋律の妙でもリズムの力強い正確さと美しさでもなく,マイケル・ナイマンのソウル(魂)。それに尽きる。優れた芸術とは,そういうモノなのだろう。「メロディがいいね」とか「この色がなんともキレイだね」とか,そんな言葉では済まないモノが,きっと,「芸術」なのだ。

何度かのカーテンコール。しかし,アンコールはなく,あっさりと終わった。

ロビーに出ると,突然,マイケル・ナイマンが物販売り場に現れて,パンフレットやCDにサインをしだした。どうやら,打ち合せなしに,突然,彼自身のサービスで始めてくれた模様。制服を着た劇場のスタッフも,少し慌てている。列に並んで,ワタシも先ほど購入したパンフレットに,サインをしてもらう。嬉しかった。「Thank you」と,力強い笑顔で手をさし出してくれたので,その手を握りながら,やっとのことで「Thank you」とだけ言う。声が少しかすれてしまった。ちゃんと英語が喋れたら,もっと色々言いたかったのに。。。

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とにかく,マイケル・ナイマンは,とてもイカしていた。今年は彼が作曲活動を始めて30周年だという。新しいアルバムもリリースされるに違いない。今度,来日しても,ワタシは,きっと聴きに行くだろうと思う。
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by rompop | 2006-06-12 22:51 | 映画・舞台・音楽


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