2006・2・15② 『クラウディアからの手紙』。


この舞台は実話に基づいている。数年前にTVのドキュメンタリーで偶然にこの話を知った時は,とても衝撃を受けた。
d0062023_08399.jpg

☆ストーリー☆
太平洋戦争終戦の頃,身に覚えのないスパイ容疑でロシアに抑留された1人の日本人がいた。蜂谷弥三郎。日本に新婚の妻と産まれたばかりの娘を残したまま,母国へ帰るコトを許されず,実に50年もの間,異国での過酷な生活を強いられる。

極寒の地での刑務所生活,釈放されてからもスパイ容疑は晴れず,彼はさまざまな差別を受け続けた。そんな彼を差別と虐待から守り,37年間支え続けたもう1人の妻・クラウディア。彼女もまた,蜂谷と似たような境遇にあり,身寄りがなかった。

身を寄せ合うようにして働き,2人はなんとか生きのびる。そしてずいぶんと長い時間が経ったあと,彼らは蜂谷の日本の家族の消息を知る。蜂谷の日本の妻は,再婚もせず娘を育て上げ,ずっと1人で夫の帰りを待ち続けていた。「どうか帰ってください」,老いた妻と,娘の手紙。蜂谷は苦しむ。長いあいだ,心の奥底に秘めていた母国への望郷の念があふれる。

クラウディアは,そんな蜂谷の心を知っていた。そして,ほかに家族もない病身の自分を捨てて,日本に帰るコトなど,彼は決してできないというコトも。

「他人の不幸のうえに自分の幸福を築くことはできません。今,あなたを帰さなかったら,ワタシはきっと後悔する。」

クラウディアは,80歳の夫を日本の家族のもとへ帰す決心をする。




素舞台に近い簡素なステージで,主人公蜂谷氏とその家族の過酷な人生が時系列で演じられる。青年時代の蜂谷,妻・久子との出会いと娘の誕生。つつましく幸福な生活が,一瞬にして打ち砕かれる。突然ふりかかった,スパイ容疑。好意で1度夕食に招いただけの男が,自分の罪を軽くするために,蜂谷にスパイの濡れ衣をきせたのだ。「すぐに戻るから」と妻に言い残して,連行される蜂谷。想像もできない長い拘留生活。拷問と飢えと厳しい寒さ。蜂谷は何度も,生死の境をさまよう。

メインの3人以外の役者は,1人で何役も演じ,時には音を出し,舞台背景になったりもする。

主演の蜂谷氏を演じた佐々木蔵之介は,素晴らしく良かった。彼の舞台は,小劇場にいた頃,『惑星ピスタチオ』以来はじめて観たけれど,凄い役者になったと思う。目ヂカラの強さが際だっている。なんという眼をするのだろう?とオペラグラスを覗きながら,何度も思った。これからももっと凄くなっていくかもしれない。

上演時間は15分の休憩を含めて,3時間10分。実話の持つあまりの重み。素舞台に近い場で,役者たちが身体1つでこの物語を演じ続ける。これまた過酷な作業で,身体も精神も消耗が激しいだろう。観ていても涙があふれたし,本当の話だと思うと胸がつまって苦しい場面も。

でも,極限の状態の中で,相手を思いやり続ける人間の物語は,余分な感傷や甘さがない分,崇高で美しかった。

幕間の休憩に,おもわずパンフレットを購入。1200円。原作の本も売っていたが,買わなかった。やっぱり,Amazonで注文しようかな。
[PR]
by rompop | 2006-02-17 14:22 | 映画・舞台・音楽


<< 2006・2・18 久しぶりに... 2006・2・6 『ムットーニ... >>