2005・9・18 飛騨高山へ①

飛騨高山へ,1泊の旅。新大阪から新幹線で名古屋まで行き,高山線に乗り換えて,高山駅まで。


1時過ぎに高山へ着く。レンタカーを借りて,市内観光コースと,白川郷コースの2手に分かれる。いきなり民家の中に合掌造りの屋根が見えた瞬間に,車酔いも吹き飛んだ。

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世界遺産に登録された,という,白川郷の集落。のどかな自然の風景の中に,点々と,大きな茅葺(かやぶ)き屋根の合掌造りの木造家が点在している。金色の稲穂,ススキ,紅色や淡いピンクのコスモス,黄色い小菊や野の花。それらが咲き乱れ,集落の中を走る水路には,底まで透明な水が満々と流れている。水を覗きこむと,大きなコイや,川魚がゆらゆらと泳いでいる。

濃い灰色の大きな魚が,何匹もゆうゆうと泳いでいた。覗き込んだワタシたちは,「わぁ,大きい。フナかな?」「鯉ですか?」「なまず??」と騒いでいると,隣で一眼レフのシャッターを切っていた中年男性が「マスです。」と,ひと言。そういえば,魚の背には綺麗なオレンジ色の細かい点々が。ニジマスだろうか。

どの池や水路を見ても,魚たちが見える。きっと,とても綺麗な水なのだろう。


d0062023_015945.jpg集落の入り口にある,ひときわ大きな家。『和田家』と看板がある。ここは家の中を一般公開しているらしい。入場料は300円。靴を脱いで中へ入り,家中を見学。黒く光った古い床,はしご段を上り,屋根裏部屋のような天井が低くて広い部屋には,昔使われていた農耕道具などが並べてある。この家には,公開している部分をのぞいて,今も,普通に人が住んでいるようだ。


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あぜ道を歩きながら,集落をそぞろ歩く。雪の降りつもった真っ白の集落も,さぞ風情があるだろう。でも,穏やかな初秋の,こんな風景も,いかにも「日本の秋」というカンジがする。道路に面した土産物屋や,茶店も,ほとんどが藁葺き屋根の合掌造りだ。店先にさまざまな民芸品がぶらさがった風景も,とても可愛らしい。








車に乗り,『城山跡』という展望台へ登る。眼下に集落が一望のもとに見渡せる,絶好のビューポイントミニチュアのような合掌造りの家々。これを見ると,やっぱり永久に保存して欲しいなぁ,と思う。夢中でシャッターを押したが,この景観は,とても写し取るコトはできないだろう。

「雪の頃には,すごく綺麗やろうなぁ」じっとその風景を見下ろす。

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少し時間があったので,もう一度集落に戻って,風情のある店でお茶を飲んで休憩するコトに。しかし,目星をつけて入った店は,ただの写真展示などをやっているだけで,喫茶はやっていないようだ。「お茶はやってないんですか?」と尋ねるワタシに,店主は「ええ,喫茶は今,考え中なんです」と,のんびり答える。ガッカリしたが,微笑ましかった。

あきらめて,別の店で,抹茶ソフトクリームを買ってもらい,庭に置かれたベンチに並んで座って食べる。センセイたちは,かき氷と,エスプレッソ。

本当は,もっとゆっくり,集落の一番端まで,ぶらぶらと歩いてみたかった。資料館なども,全部入ってみたかったが,夕食までに宿に戻らねば,ほかの人に迷惑がかかってしまう。少しだけココロを残しながら,車へ。

もし,またの機会があったら,できれば今度は雪のシーズンに,この集落の中の民宿にでも泊まり,温泉に入って,のんびりと1日,この空気を味わいたい。



宿は,奥飛騨温泉郷にある,『湯元長座(ちょうざ)』。「日本秘湯を守る会」に所属している宿だ。石段でできた,長いエントランスを登りつめると,堂々たる風情の,古めかしい宿の玄関。そのエントランスの最後には,湧き水が出る水飲み場があり,ひしゃくが2本,置いてある。傍らには,座って休めるように囲炉裏のある休憩場。いっきに,タイムスリップしたよう。

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宿の主人のこだわりで,あえて古い木材を使い,昔ながらの宿を再現しているのだそう。天井の高いロビーには,ソファやテーブルがあり,その隣には,畳に囲炉裏の部屋。熊の頭付きの毛皮が敷きつめてある。囲炉裏には,もちろん本物の火が。外国人の観光客が,とりわけ喜びそうな風情だ。



客室はいくつあるのだろう。とても広々としている。床や天井,壁などに使われている黒光りしている木材が,どっしりと重厚で,しかも落ち着ける雰囲気だ。気に入った。

ワタシたちの部屋は,離れに用意されていた。離れへ行くまで,またもや,長い長い渡り廊下を歩いてゆく。両隣はガラスで,外界の自然がたっぷりと目に入る。青々とした緑の中庭,水しぶきをあげて回る,小さな風車。夜になると,外は真っ暗になり,渡り廊下には,点々と置かれたランプが小さな灯をともす。怖いような,美しいような,幻想的な雰囲気。「幽玄」ってこういう風情を言うのだろうか。

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7時前にワタシたちが到着すると,ほかの人たちは,みな,温泉に出かけたあとだった。誰かが戻ってくるまで,部屋で待つ。

広すぎる部屋。中央の広い畳敷きの部屋の両隣には,6畳ぐらいの小部屋が2つあり,その1つには,本物の囲炉裏がある。洗面台もトイレも広く,黒い木をたっぷりと使ってあり,とてもイイ感じ。母たちを連れてきてやりたいような,宿だ。





7時半から,夕食。これは,2階にある大部屋で。

大きな囲炉裏が用意され,それを囲むようにして,座る。そう大きな火ではないが,顔がほてるように熱い。これは真冬ならとても温かいが,夏は逆に辛いだろうな。9月中旬とはいえ,まだ半袖のワタシたち。少し暑い。

食事が始まる頃,宿の主人が挨拶に来られた。人の良さそうな初老のオジさんだ。宿のなりたちについて紹介されたあと,温泉の紹介などがあり,「食べながら聞いてください」と言われたが,箸を止めて,かしこまって聞く。

さて。夕食は,山菜がたっぷりの,土瓶蒸しや佃煮,天ぷらなど。メインは,朴葉(ほおば)という大きな葉っぱの上で肉や野菜を焼き,味噌をまぶして食べる,朴葉味噌焼き。肉は飛騨牛でとても柔らかく脂があって,美味しい。

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d0062023_2353853.jpgそして,火の周りの灰には,串を通した,岩魚(いわな)の塩焼き,五平餅(ごへいもち),じゃがいもの味噌焼きなど。調理場で焼いたばかりなので,熱々ですぐに食べられるようになっている。


9時過ぎにお開き。お腹いっぱいになった。なかなか美味しかったと思う。なにより,囲炉裏で食事をする,という非日常感覚がたっぷり味わえた。


食事のあと,1人で風呂へ。貸し切りの家族風呂が3つあるというので,まずそこへ。「1人では入らないでください」と注意書きがあるが,鍵が開いたので,こっそり入ってみた。

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鍵つきのガラスの扉の向こうには,これまた,延々と細長い石畳の道がつらなる。庭に仕切りをして屋根をつけただけの渡り廊下。歩いていくうちに,期待感が高まる。たどりついた個室は3つ。2つが空いていたので,さっと入って鍵を閉める。





小さな浴室の外には,これまた小さな貸し切りの露天風呂。しかし,外は真っ暗で,湯の音だけがしていて,なんだか怖い。隣の風呂には客がいるはずだが,何の音もしない。気味が悪くなり,すぐに出てしまった。まぁ,いちおう入った,というコトで。

また,長い渡り廊下を戻って,今度は大浴場へ。そう大きな浴場ではないが,総檜(ひのき)造りらしいので,木のいい香りがする。白っぽい木肌。パンフレットで見たよりも,ずいぶん年季が入って古びてはいるが,やっぱり落ち着く。灯りも,蛍光灯ではなく,ぼんやりとしたオレンジがかった懐かしい感じの灯りだ。

d0062023_23584332.jpgこの温泉は,たっぷりとした「かけ流し」の湯だと,宿の主人は少し得意そうだった。温度はそう高くもなく,ずっと入っていられそうな,ワタシ好みの水温だ。

外には,露天風呂がある。木でできた引き戸をあけた時,何かが跳ねたので,「あ」と思って足元を見ると,赤茶色の小さなカエル。ワタシと一緒に,戸の外へ出たようだ。ううむ。風情だなぁ。

外は真っ暗で,ほとんど灯りもないので,景色はよく見えない。ただ,大きな木が周りに生い茂っているのだけが見える。大きな岩でできたスロープをゆっくりと歩いて,湯に入る。深さはない。これも,ほどよく温(ぬる)めの湯だ。ワタシは熱い湯が嫌いなので,満足のため息をついて,首までたっぷりとつかって,キョロキョロとあたりを眺める。

だんだんと目が闇に慣れてきた。浅くて広い露天だ。それでも,向こう側はなおも暗闇で,ただ,湯がほとばしり出る音だけが響いている。少し,怖いな。中の浴場には人がいるが,外にはワタシ1人。の静けさと黒さが,すっぽりとワタシを包んでいる。

浴室の窓から誰かが頭を出し,「わぁ,露天風呂がある」と嬉しそうに言い,やがて,頭にタオルを巻いた年輩のご婦人が1人,戸をあけて外へ出てきた。そして,あっという間にザブンと湯につかり,「あらぁ,気持ちいいねぇ」と,方言なまりで大きなひとり言。怖かった暗闇が,急に怖くなくなった。ワタシは心底ホッとして,「あぁ,ヨカッタ。1人で怖かったんですよ」と話しかけた。そして,暗くて顔はよく見えないが,顔を見合わせて,2人で笑い合った。

風呂の中央には,白っぽくて大きな平らな岩が1つ。ワタシはまるでカエルのように,その岩に座って,少し風を浴びた。そのご婦人は,「フウ」と満足のため息をついて,仰向けになり,湯にプカンとしばらく浮いていた。

しばらくして,小さな子供を連れた若い女性と,そのお姑さんらしき年輩のご婦人が入ってきた。子供は暗闇を見て「怖い怖い」と泣いていたが,2人に手をつながれたまま,恐る恐る湯に入った。

いつまでも入っていられそうだったが,上がるコトにした。大浴場へ戻り,髪を洗う。こんな大きな檜のお風呂が家にあったら,イイだろうなぁ。

部屋には,浴衣と,作務衣(さむえ)の2種類が用意されていた。楽そうだったので,作務衣を着た。裾がはだけないので,こっちのほうが,いいな。

館内をウロウロして,写真を撮りながら,部屋へ戻る。11時過ぎ,就寝。
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by rompop | 2005-09-18 23:18


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